休刊・廃刊・雑誌業界の最近のブログ記事


これ、先日ニュースとなってあちこちで取り上げられていたけど、個人的な第一印象は、よいことだけど危ういなあ、という複雑な心境。具体的には指摘されている通りで「インチキ話でも刊行されると流布されて信じ込む人が出てくる」「インチキとそうでないものの境界線は誰が決めて、その正しさの担保はどこにあるのか」という相反する問題がばりばり伝説。

ものの良し悪しを販売側が決める。単純に売れるか否かではなく、インチキか否かの判断でということなら、その判断を販売側がゲットしたことになってしまう。例えばアマゾン関係者がインチキ本を刊行したら、それも今回の話同様に販売停止はできるかな、というところだ。

報道の話でもちらほら降れているけど、ある程度配信力、頒布力を持つと、実質的に司法的な力を持つことになる。力を持つ者の義務とされているノブレス・オブリージュを果たせるのか、さらにはそれを当人が果たしていると断じていても、社会全体としてはまったく真逆だったりすることもある。グーグルの「Don't Be Evil」問題なんてのもありました。


これはもう「分かる」ボタンを10連射したいぐらいの話。雑誌連載の作品が単行本化される際に、一応雑誌では(打ち切りっぽく見えても)最後まで連載されていたのにもかかわらず、単行本化は最後までされないってパターンが結構ある。特に四コマ漫画系。

素材はあるのに何で単行本化されないのか。SNSの普及で作者側の声がもりもり聞こえてくるようになって、その限りでは「打ち切りされた作品だったり、終わる時には人気投票でも下位のものだったし、それまでの巻で売上が落ちていたから、最終巻とかそれに近い巻とか出しても出版社側にとっては採算が取れないので、それじゃ出さないよ」という判断が下されるのが多分らしい。まぁ、希に版権の問題とか、作者側の意向ってのもあるけど。先日ちょいと言及した「採算ラインを下回るから本の単行本は無しで電子書籍でならいいよ」ってのも同様の考え方。

中国地方5県、九州7県で4月1日から、雑誌と書籍の新刊の店頭発売日が従来よりもさらに1日遅れることが9日、分かった。物流会社の人手不足やコスト上昇が要因。自前の物流網を構築したインターネット通販のアマゾンジャパン(東京)は従来通りの日程で配送するとみられ、中国、九州の書店は新刊販売で不利な状況に立たされることになった。

「9日、分かった」とあるけど後ほど紹介する一次ソースは3月5日なので、それまで気が付かなかったのかというツッコミとともに、日本出版取次協会側ももっと積極的に広報展開せんかい、という感は否めない。

元々地方だと定期刊行誌の展開は一日二日遅れるのは当たり前ってのは昔ながらの話なんだけど、今件は配送の都合でそれが確定するよ、というもの。法令違反云々とあるけど、これ、それ以前は法令違反でなかったということなのだから、配送業者の数が減っているんだろうなというのは容易に想像ができる。出版物の絶対数や配送が必要な頻度が高まっている可能性もあるけど。

この類の人手不足の問題は、結局賃金をしかるべきレベルまで上げるしかない。すぐには人数は揃わないかもしれないけど、相応のレベルをキープし続けていれば、それに向けて携わりたい人が増えてくるまでの話。要は「こっちの水は甘いぞ」というシグナルを発することが出来るほどの引上げをすればいい。それができずに人手不足ならば、ビジネスモデルと現状の環境との間にひずみが生じているわけだ。


先のアマゾンでのあわせ買い対象云々と合わせ、気が付いたことを二つほど。まずはKindle Unlimited化する雑誌について。すべての雑誌がってわけではないのだけど、閲覧権利の買取では無く、新刊をKindle Unlimited化にぶち込むってケースが出てきたので珍しいなぁ、という感じが。1冊単位での購入利益は無くなるけど、Kindle Unlimited会員がページを読むたびに、ページビューに合わせた課金的なものが入る形となっている。絵や写真、図版が多い雑誌の場合、それらでも1ページには違いないので有利には違いない。色々と葛藤はあっただろうけど、そういう選択肢が選べるのであれば、それを選ぶのもまた自由ではあるし、面白い話。

ただコメントを見ると、雑誌によっては紙媒体版には存在しているページが電子版には無かったってケースも。どうやら版権上の問題らしいんだけど、どのページが収録されていないかってのは大抵の場合は書いてない。購入してみたら、読んでみたら載って無かったってのはちょいと理不尽ではないかなという気がする。


詳細は色々と支障が生じるので避けるけど、少女系だか女性系だかのコミック誌のコメントに、上記のようなことが書いてあった。いわく、これまではアマゾンで一冊単位でも注文できたから買っていたけど、あわせ買い対象となってしまったので気軽に買えなくなってしまった。今後は他の販売スタンドで買います云々。

あわせ買い対象ってのは低額の商品に関して単品では購入注文ができず、他の商品と合わせて2000円以上の注文にならないと受け付けないよ、というもの。細かい注文でそのたびに梱包やら宅配ってのは経費の負担が大きいからってのが理由らしい。まぁ、プライム会員になると無料配送の領域が広がるので、それをもりもり利用していると、困っちゃうよねってのも一因なのだろうな(プライム会員でもあわせ買い対象の規制は適用される)。

他方、あわせ買い対象になったらアマゾンでは買わないってのは、どういう購入属性なんだろうか、と考えてみる。近くに本屋が無いので実店舗では買えない、買うのは面倒くさいってのはあるのだろう。あるいは恥ずかしいからとか時間がもったいないとか。加え、ちょっとしたハードルがあると購入を諦めてしまうような、ロイヤリティーが低い層だってのは容易に理解はできる。今回見かけたのは他のスタンドで買うって話ではあったけど、買うのを止めますっていうことになるのかもしれない。


紙媒体の実本と比べ電子書籍は収納体積をほとんど必要とせず、整理整頓も楽て、持ち運びも簡単、検索も容易というメリットがある。一方で電子書籍は蓄積するに連れて紙媒体の本以上に埋もれてしまう(iTunesの音楽データが良い例)のに加え、現状ではその大部分が書籍データの提供では無く配信側のデータを閲覧する権利の購入に過ぎないので、配信元がコケたり投げたりしたら、手元の権利が吹き飛んだり棄損したりしてしまう問題点がある。

「他の配信元がデータを引き継ぐから心配はいらない」とはよく言われるけど、引継ぎ先が手持ちの閲覧権のデータを持っていなかった場合は払い戻しになってしまうし(処方薬でよくあるパターン。別病院で使っていた薬が新しい病院では処方対象になってなかったとか)、閲覧権が引き継がれてもインターフェイスが好みので無かったり悪辣なものだったりすると、実質的に価値が損なわれてしまうことになる。


出版業界の低迷ぶりは現状を正しく把握できない、内部構造の旧態依然的なところに大きな要因があるのではないかとし、具体的な一例として刊行後の初速的な売上ですらまともに把握できない、旧来のライン部分でしか確認できないという実情が話題となっている。その旧来ロジックで打ち切りか否かなどが判断されるので、ファンの読者にとっては人気がある、皆も買っているのに突然打ち切りになってしまうかもという不安にさらされる。

そして自分の愛している物語が、突然出版社側の都合によって首を絞められる、下手をするとある日朝起きたら世界が無くなっていました、的な展開に放り投げられてしまう。そんな悲しい体験はしたくないので、安全牌の作品にしか手をつけなくなるという傾向が生じてしまう。

これは「売れそうなものにはどんどん客が集まる」「売れ無さそうなところからは客が次々逃げていく」という二極化を促進するものとなる。続きが危ういと思われているところからは読者は逃げていくってのは、指摘の通り、失敗を避けたいとする消費者の傾向と合わせると、至極当然ではある。

...個人的にも昨今のラノベ系、なろう系のウェブコミック化で似たような経験・感想を抱いていたりもする。原作都合か作者都合か編集部都合か出版社都合かは知らないけど、突然連載が不定期になったり、更新未定になったり、掲載されている作品がガッツリ削られたりすると、その作品へのモチベーションがどん底まで落ちるし、その類の話が繰り返されるプラットフォームとか作者とかの作品は、ちょいと敬遠してしまう。

そのような傾向も合わせ、二極化するってのは仕方が無い。取得ハードルは低いのでリスクが高いところのコンテンツのつまみ食いでなら問題無いだろうってのも意見としてはあるかもしれないけど、その類のがたくさん出てくるとそれだけでお腹いっぱいになってしまう。食品売り場のサンプルで満腹してしまうようなもの。たまにならばいいけど、やっぱり腰を据えて食事をしたいよね、というのはモノの道理。

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