「増税で緊縮財政で財政再建して経済成長しよう」「えっ?」

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消費税率周りの話でよく出てくるのが「財政体質の改善が必要。その動きを見せないと日本は信用を失い株価が暴落し債券もえらいことになる」という話。というよりは財政再建急務第一義的最優先事項的な論調には、大体それがセットになる。さらにいうと「財政体質の改善をすれば国内外で信用されるから、日本への投資は強まり、国内でも消費は加速され、経済は発展する」というもの。えーと、合っているような雰囲気を覚えさせるのだけど、なんだか首を傾げたくなる。

ということで、一部で色々と話し合われている、増税と緊縮財政と信用の話。先の消費税率10%改訂は一時ホールドしよう云々ってのとつながりもある。


経済ってのは多項目のパラメータで構成される有機化合物......というか生命体みたいなもので、常に進化しているもの。特定の時期で対応できた手法が、他の場面で同じように使えるとは限らない。まさに病気への対応と同じで、似たような事象を複数探してマッチングしそうな手法の組合せで対処していくしかない。同じ風邪でもある時効いた薬が別の時に効かないとか、結構あるでしょ?


時々当方も言及しているけど、「全体のリソースを増やさずに、あれも欲しいこれもしたいってのは無理」「それ、どこから原資持ってくるの?」という話が結構スカスカだったりするのよね。で、その辻褄を合わせるために、最初の「増税で緊縮財政で財政再建して経済成長」が語られることもある。でも少なくとも前世紀末以降、特にオイルショックの後の消費税周りがトリガーっぽい、失われた20年やらなんやら、デフレ継続時代以降は、それは通用しない。結構あちこちで実例が出ているし、それは明らか。


巨大なレベルで先例を欧米諸国が見せてくれたのだから、ねえ......ってこれと似たようなパターン、福祉関連でスウェーデンを事例にした話ってのがあったよなあ。「スウェーデンを真似ろ」っていう。で、同国では年金制度が破綻しているという、ね(【かのスウェーデン首相「75歳まで働いて、でないと年金が......」】)。

で。今件周りでちょいと別方向のきな臭さを覚えていたんだけど、その理由が分かったのがこの指摘。


理想ではあるけれど、人の信用・信頼ってのはそんな単純では無く、単項目のパラメータで設定できる類の一次方程式なものでもない。そして消費税率周りで、それはガッツリ前例として証明されてしまっている。

第一仮に「福祉充実」がある程度果たせたとしても、それは「今の」シニア層向けなものになるのは必然的な話なので、若年層から中堅層には負担ばかり増えることになって、ますます信用は損なわれ、経済は衰退してしまうんでしょうな。

今が半ばそんな感じ。若年層の消費が減退しているのは、可処分所得そのものの減退の他に、社会そのもの、世代が上の人たちに対する信用が損なわれているからなんだよな。

今件のお話では指摘が無かったけど、税率引き上げの停止や再審議で財務体質の改善に懸念が示され、それで株価が暴落したり債券周りが大変なことになる云々ってのは、一体どれだけの裏付けがあるんだろう。アメリカとか欧州とかは? 財務体質改善が結局のところ、経済の立て直し、景気伸長を目的とするのなら、尚更その景気を抑える手立ては優先順位を下げるべきでは?

まぁ、【消費税率は8%に固定し、一度白紙に戻して再審議すべきという提案】でも触れているけど、何を一義的に考えているかってことなんだろうなあ、要は。実の所「増税で緊縮財政で財政再建して経済成長」って解説ですら、大義名分でしかないのかもしれない。

というより根本的な問題として。「増税で緊縮財政」は本当に「財政再建」なのかしらね。そしてその言葉で語られている「財政再建」は、本当に必要不可欠なことなのかしら。なんか色々と呪縛に囚われている感は否めない。

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このページは、不破雷蔵が2014年9月 7日 06:28に書いた記事です。

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