電子書籍は売れないのではなく売れる可能性が生じるまでの話

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電子書籍って結局のところ、紙媒体の書籍とは媒体と販売ルート、後方の仕方が違うだけで(「だけで」っていうけどこれって大きな問題なのだけど)、媒体を用いて文章なり画像を他人に頒布して、その対価をいただくビジネスに変わりは無い。石板に彫ったり木簡に書いていたのを紙に印刷するようになったムーブメントと同じ。

無論書籍の電子化は紙媒体のそれとは頒布方法などの性質が異なるので、紙媒体のと同じような考えは多分に通用しない。同じ紙媒体でも商業誌と同人誌の販促などが大きく異なるのと同じ発想。媒体が違うので差異はけた違いのものになるというまで。

かつてインターネットが普及し始め、ホームページさえ作れば全世界から注目されて注文が殺到する云々ってのがあったけど、実際はそんなもんじゃないよってのと何ら変わりは無い。街中に足を踏み出せば誰もが有名人になれる? そんなわけは無い。昨今ならYouTuberのあれこれと同じ。

紙媒体にしても「棚に並べたらいつかは売れる」ってのは随分と昔の話で、今ではすぐに返本されてしまう。ただ、世の中の流れに乗ると、ついで買いがされやすいのも事実。戦記物が流行るとコーナーができて、これを買おうとしたのだけど隣においてあるこれもいいなあ、的な。物理媒体ならではの利点(弱点?)ではある。


で、ついで買い的なものが生じにくい電子書籍は、一点集中的なセールスになりやすい。無論リコメンド機能もあるけど、気を付けないとすぐに某R天のようなスパム形式になってかえって嫌われてしまう。実店舗で書籍を一冊手に取ったらダース単位の店員が周囲を取り囲んで類似書籍を推挙してきたり、某ハンバーガーチェーン店で「ポテトもいかがですか」だけでなく「シェークもいかがですか」「ナゲットもいかがですか」「ハッピーセットもいかがですか」と店員全員が勧めてくるようなもの。

それに電子書籍をはじめとしたウェブの購入は、多分に特定商品の推挙や検索の結果としてのもの。目的のものを手にしたらそれで終了してしまうのだな。本屋さんに足を運んで色々とめぐって......という買われ方はあまりない。

ウェブサイトのコンテンツと同じで、トップからズラリと見ていくスタイルはあまりない。それを求めるポータルサイトでも、そのルートで見る人はさほど多くは無い。

なので指摘されている「超安売り」でのアピールは、広報宣伝活動の一つであるというのは言い得て妙。まずは存在を知ってもらう。知らなければ判断の対象にすらなりはしない。


で、話は最初に戻るけど、電子化したって意味が無いってのは正直、間違い。確実に販売ルートが一つ増え、目に留め手に取る人との接触機会が増える。これって概念的には、新聞広告を出す時に1社のみに出すのか、複数社に出すのかの違いって感じ。ただ電子書籍の場合、紙媒体の書籍とは販促方法が違ってくるので、同じように考えていると期待外れの結果となる。電子書籍化すれば誰もが目に留めて購入しようと考えるわけじゃない......って上に挙げたホームページ黎明期と同じだな。

実は今件の話、ネット上の媒体レベルでもいえること。電子書籍でも1つのシステムに対してのみ提供するのではなく、複数システムに提供してみるべきってところ。アマゾンのキンドルだけじゃなく楽天とかdブックとかブックライブとかDMMとか色々あるよね。そして読み手はそれらすべてを利用しているわけじゃないから、複数システムに配信すれば、それだけ読み手との接触機会が増える事になる。

まぁ、この辺りは上で指摘されている通り、ウェブコンテンツにおける戦略と変わらない。その辺り、紙媒体の書籍とは大きな違いがあるので、大変かもしれないけどねえ。

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このページは、不破雷蔵が2018年2月 7日 07:51に書いた記事です。

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