「漫画単行本の売上が激減」という報道

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出版界を支えてきた紙の漫画単行本の売り上げが、前年比約12%減とかつてないほど落ち込んでいることが25日、出版科学研究所(東京)の調査で分かった。書籍と雑誌を合わせた今年の紙の出版物推定販売金額は約1兆3700億円となり、市場規模はピークだった1996年の約52%まで縮小する見通し。出版不況は深刻さを増している。

出版不況云々という話の新しい情報として業界紙から数字が出たので、ちょいとした話題に上っている件。ただ、この類のってのは「昔からそうだったのに何を今さら」「一部門での不調を殊更に騒いでいる」ってケースが少なからず見受けられるので注意が必要だったりする。また、電子コミックの売り上げは多分が既刊ってのはちょいと興味深い。要は元々需要があるのに実店舗では手に入りにくくなったから、ますます電子に流れているってことなのかな。情報の検索などでも既刊は掘り起こしやすくなっているし。

また、仮に紙媒体における出版が不況だったとしても、これが人の文字を読む行為における衰退を意味しないことに注意。むしろ文字情報はけた違いに増えているし、それを読みたい、読むという思いは爆発的に増加している。媒体が多様化したことで、これまで主流だった媒体への相対的立ち位置が低下したまでの話に過ぎない。

コミックに限っても、ほんの数年前までウェブ漫画とかスマホでのコミックとかなんてのは、夢物語とか本のごくわずかな世界での話でしかなかったよね? ツイッターで連載していた漫画が出版社の目に留まってあっという間にウェブサイトでの連載、さらには紙媒体でのコミックとしての販売に至るってのも、「そんなことあるかい」とツッコミ受けるようなレベルでの話だったよ?


今件も併せ複数のデータから、紙媒体における出版物の市場規模が縮小しているのは確かではある。けれどそれをコンテンツ全体の衰退ととらえるのはどうだろうかというのが当方の心境。紙媒体が縮退すればそれに連動する形で紙媒体を取り扱う業界も縮んでしまうのだけど、それがイヤだからといって殊更に大騒ぎし、逆に伸びている部門を「なかったことにしよう」と極力伝えていないのはおかしなお話。従来型携帯からスマートフォンに携帯電話のトレンドが移行しているのに、「従来型携帯電話が売れない、携帯電話業界の危機だ」と大騒ぎしているのと何ら変わりは無い気がする。

電子媒体も含めても出版業界は縮小中との話もあるけど、これとて掌握できているレベルに過ぎない。漫画にしても文章にしても、世の中に出回っている数、量が昔と比べて減っているようには思えない。だとしたら、ビジネスとして上手く行っていない、お金の稼ぎ方がまだうまく働いていないか、把握しきれないだけのお話。

そう、電子媒体のビジネスってのは紙媒体とはまた別の意味で色々と複雑なのだよね。無料展開しているウェブコミックとかは、売上の上ではゼロ計上かもしれないけど、あれは広告・告知目的のものだから、そう考えれば広告費として運用費は計上できるのだろうし、表示で得られた広告費は売上になる。

まぁ、出版物関連の記事でも言及しているのだけど、電子媒体系はそれを取り扱う個々の企業の内部では数字を掌握しやすいけど、それを業界全体として共有化、さらには公知ってのはなかなかされないからねえ......。新聞の部数とかも似たようなものだし。

この辺りのお話は早いうちに何らかの統一規格的なモノを作って統計を取るべきだし、それをしないとますます出版業界の発表する数字が旧態依然のもの、現状に合わない無意味なもの、大本営発表的なものとなってしまうのだな。

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このページは、不破雷蔵が2017年12月26日 07:56に書いた記事です。

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