新規雇用の条件を上げられない理由と、その姿勢への疑問と

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実のところ自動車整備業界周りの話自身はちょいと前に出てきたもの。それが再び色々と注目を集めるようになってきた......のは事実だけど。これって自動車整備業界だけに限った話ではないし、それがすべてでも無かったりする。

指摘されている通り、人材を確保し、業界を維持するためには、新規の人手を雇用し育成していくのが欠かせない。けど景況感や雇用市場の変化に伴い、条件を良くしないと現状の求職者難が解決しないというのに、それを成さないのはなぜなのか。

要は新人の雇用条件を良くしようとすると、既存の従業員の条件も合わせてよくしなきゃならないからという話。新規雇用者が月収10万円で、それ以降1年勤務ごとに1万円アップするような条件の場合、10年就業者は月収20万円となる。ところがそれでは新人が集まって来ないので、新規雇用者の月収を25万円にしようとすると、その年の新人の月収は25万円で、10年就業者は20万円となり、給与が逆転してしまう。

それでは現在就業している人が激おこぷんぷん丸となる。かといって、現在就業している人も同様に水準を上げるとなると、ダイナミック大変な負担が会社にかかるのでそれはできない......ということ。

でもこれってよく考えてみると、従業員の少ない企業なら、絶対金額的な負担はさほどでもなく、むしろ大企業の方が大変になる(無論その分利益も大きいけど。でもそこまで考えたら、規模の大小は関係なくなるよね)。

この理屈は自動車整備業界に限らず、人材不足周りのお話における、新人雇用の際の条件を上げにくい理由の一つになっていると思う。新人だけ好待遇にするわけにはいかないって、ね。

で、良く考え直してみると、「既存の社員の待遇も改善しなきゃならない、それは無理だから新人も待遇を良くしない。だから人材が集まらない。大変だ」ってのはおかしな話ではある。デフレ時代の時には「上の人の待遇と比べて新卒のは悪くなります」としてもどんどんやっていたのに、なぜ反対の状況だとできないと主張し、それが正当性のあるものだと思えるのだろう。デフレの時には、働き場が無いので仕方がないから悪条件下でも仕方なくとの事情があるのだろうけど。

ただその当時の対応が「雇用環境に鑑み、許される状況だった」との弁明をするのなら。現状は雇用環境は変化をしているのだから、それに対応する姿勢が必要だということ。デフレの時には雇用環境に応じて待遇を落とし、現状のような雇用環境の変化が生じても対応しないというのは、虫が良すぎる。

現状における中小企業の人手不足の原因は、少なからずそこにあるのだろう。しかしながらそれはすなわち、雇用環境の変化に対応する進化力があるか否かを求められているだけの話。環境が変わっても、昔の状態を維持したい。それは無理なお話。思いっきり雑な例えをすると、先日まで葉書は52円で出せていたのだから、今後も52円で出したい、と駄々をこねるようなもの。成長してきたので昔の服が着られなくなったから夏服を買い替えなきゃ、でも冬服は以前のままの服を着続けたいという感じ。


指摘の通り、景況感や雇用関連の環境が変わってきたのだから、それに対応しなきゃ生きてはいけない。それが出来ないのなら、淘汰されるのが必然ということ。生物の進化そのものでもある。それを世の中や大企業、政府叩きに使うのは、愚の骨頂でしかないのだな。

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このページは、不破雷蔵が2017年6月 5日 07:54に書いた記事です。

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