「国の借金1071兆円=1人当たり845万円」なる表現をいまだに通信社がしている件について

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財務省は10日、国債と借入金などの残高を合わせた「国の借金」が2016年度末に1071兆5594億円になったと発表した。


昨年12月末に比べ5兆1360億円、前年度末に比べて22兆1933億円それぞれ増加し、過去最高を更新した。社会保障費が増加する一方、税収の伸びが落ち込み国債発行が増えた。今年4月1日時点の推計人口(1億2679万人)で割ると、国民1人当たりの借金は約845万円となる。


「国の借金」との表現では日本国全体、国家組織や所属企業、民間人すべてに至るまでとの誤解が生じますが、今件額面は日本国政府による借入金(財務省の資料上の表記も「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」)。「国の借金」との表現はミスリードです。「国の借金」「国民一人あたり」などの言い回しを使うべきではありません。国債の約9割は日本国内で購入され、それは同時に日本国民には債権にもなります。さらに日本国債は円建てによるものです。

最近では日銀が国債を購入する割合が増え、「意味が無い」と一部専門家は言及していますが、日銀が得た利益(国債の利息)のうち経費や税金を支払った後の剰余金は、準備金や出資者への配当に充当されるものを除き、国民の財産として国庫に納付されます。さらに政府は日銀の株式を55%保有し、相応の配当も受け取れます。

これぞまさに印象操作的なフェイクニュースといえましょう。


財務省から四半期単位で発表される国債周りの値をネタにした報道のたびにツッコミのコメントをするお仕事......。と半ば自嘲しながらも、これができるようになっただけマシなのかもしれないなあ、と。二つ目の囲みにあるようなコメントをしたけれど、少なくとも元資料では国民一人当たりとか国の借金なる表現はないのだよね。「分かりやすくするための言い回し」との説明をするのだろうけど、分かりやすくても正しくない説明は、単なる間違いでしかない。

そのような言い回しを繰り返し成すあたり、ISILをイスラム国と表記し続けたり、「共謀罪」をいまだに表記しているとか、「戦争法」なる表現をしているのと同じように、従来の意味と現在多用されている意味双方での「確信犯」のような気がしてならない。いずれにせよ、これこそがフェイクニュースなのだろうなあということに変わりは無く。

それにしても。他社に情報を販売する通信社がこのような記事を展開するとは、ある意味驚きではある。いいのかな、それって。

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このページは、不破雷蔵が2017年5月11日 07:27に書いた記事です。

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