「自分が好んだ仕事だから対価は安くても良い」は少なくとも雇う側が口にしてはいけない

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先日の「好きなことで生きていく」にも連なる話ではあるのだけど。クリエイティブ系のお仕事では特に、何か金銭的なもの以外のものにかこつけて、対価を実質的に値切ろうとする慣行があったりする。「好きでやってるのだから」「名誉が得られるから」「うちで仕事ができるだけありがたいと思うべきだから」「他人との触れ合いを実感できるから」。例の某大手居酒屋チェーン店のトップがドヤ顔で語っていたことを思い起こさせる、あの方法論。

ただこれって発生する対価が少なくなれば一時的にコストは減るので雇う側は利益が上乗せされるけど、業界全体に回る金銭が減ってしまうし、「儲けられない」さらには「生活が難しくなる、その業界で生き難い」との認識が広まり、人材をはじめとする各種リソースがやせ細ろえていき、業界そのものが縮退してしまう。儲けが出ない世界には誰も足を運ばない(。だからこそ、儲けが出なくても社会的に必要な業界は公的に支える必要があるんだけどね)。

だから雇う側が「面白い仕事だから、やりがいがあるから、対価は低いけど我慢してね」と口にしちゃ絶対にいけない。それは業界全体を削り取って自分の懐に収めようとしているようなものだ。食い逃げだよね。

一方、高齢者の再就職とか退職後の半ば余興的な感じでの仕事とか、お気軽な小遣い稼ぎ感覚とか、時間の合間に的な風に、「好きでやってるし」「相手も(廉価なので)喜ぶし」的な感じで仕事をやってしまうと、従来の対価でしていた人の仕事が買いたたかれてしまう。だからこそ、雇われる側でも「好きでやってるので対価は安くても良い」などということを口にしてはいけない。対価はその仕事への評価に他ならず。正当な成果には正当な報酬を。自らの安売りは自分を卑下することになる。

まぁ、その類の安売りにおいて同じ品質を維持できれば良いのだけど、そうでない場合も多々あることを考えれば、買う側、雇う側の見る目が無いということなんだろうけどね。......結構あるんだよね、品質が一目で分かりにくいクリエイティブ系の業界では特に。

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このページは、不破雷蔵が2017年2月 7日 06:42に書いた記事です。

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