二元論の問題と「『わかりやすい』が『ただしい』とは限らない」と

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もう一つ、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票絡みで。僅差ではあるけれど離脱派が勝った事に関する分析は多方面で出始めているけれど、先日紹介したBBCの記事や今件の解説のように、一つの要素が物事を決定づけるってのは滅多に無く、多分に多様な要素の融合的な結果としてだったりする。そして今件の投票結果に関しても、複数の要因の絡み合う状況によるところが大きく、これがあったからこうなったというのは無いと見た方が道理は通る。

世の中にオールorナッシングなど無く。多様な要素のウェイトの問題ってこと。世の中は多分に複数要因のベクトルの合力として結果が生じる。「これがダメだったから(皆離れていった)」「この話があったから(その話に引き寄せられた)」「今問題が生じていたから(問題を避けるために別のものが選ばれた)」といった二元論はシンプルで分かり易く、その要素の「大きさ」が多分ならば、二元論のようにも見えるけど。

例えば福神漬けがマズいカレーショップでも、カレー自身やご飯が大変美味しければ、普通のカレーショップと比べてその店を選ぶ人は増える。でも福神漬けが美味しくてもカレーそのものがマズくご飯もダメな店には、客は中々集まらない。カレーライスにとって、カレーやご飯はメインであり選択の際の多分な要素だけど、福神漬けは要素の一つに違いないものの主要な要素では無く、選択時のベクトル合力には大きな影響は及ぼさない。

後は似たような話で「Aに問題がある」から「ならばAでは無いBが良い」という詭弁も要注意。他にCやDなどの選択肢があるかもしれないし、BとAを多方面から比較してどちらが良いのかの(まともな)検証がなされずに、突然Bを差し出される事がある。まあ、この辺りは以前【「二分法の罠」の仕組みを図で解説してみる】で解説した通り。

イギリスの話に戻るけれど。今回の投票に絡んで結果が出た直後に某所から出てきた、「離脱派が買ったのは移民のせいだ」といった「分かり易い」話は、何か大きな事案が起きるとそれに合わせてその話題を盛り込んでダマしのリンクを踏ませようとする、トラップ系のツイートと、本質的にはさほど違いは無いと解釈すれば、あながち的外れではないのかな、と感じてしまう。

そしてそのような「分かりやすいけど正しくない話」への対策も同じ。過去の発言、ツイートを見返して、アカウント・語り手単位の信ぴょう性の精査をする。

「『わかりやすい』が『ただしい』とは限らない」には「(あまりよく考えない、すぐに飛びついてしまう人に)誤認させやすい」も含まれているのだよね。

状況、話全体の本筋を極力すくいつつシンプルにまとめ上げるのには、まず本筋を理解して、そこからずれないように、そして間違いの無いようにまとめる技術が必要になる。その部分の技術が無かったり、つまみ食いをしたり、美味しい部分だけ抽出して拡大し全体像のように見せるといった悪用がされると、悪質系まとめサイトや、今件事案のようなことになるわけだ。

まぁ、名前を見てピンときたら、まずは過去の履歴を確認するってのは、ウェブに掲載されている文章すべてに言えることではあるのだけど。

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このページは、不破雷蔵が2016年6月27日 08:05に書いた記事です。

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