派遣業周りの話で「中抜きされるから手取りが少なくなる」ってのなら......

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先日の【非正規、特に派遣問題と法改正、そして解説の曖昧さと違和感】でも触れているけれど、昨今の安保やら派遣業周りのどたばたは、傍から見ているとプロパガンダの香りが強くて、本質がかなりごちゃごちゃとしている感がある。改正しようとする前の、つまり現行法の何が問題なのか、その問題にメスが入ることで誰が困るのか、とかね。

派遣業に関しては元々結婚・出産後の主婦層でスキルを有する人が労働人口として存在しながらも活躍できる場を得られる機会が少ないとの労働市場の状況が、登場理由ではあるのだけど。例の「派遣村」事案のように、ネガティブな部分ばかりがスポットライトを浴びて政治的ツールに用いられ、本質が見えてこない。

で、派遣業で問題の一つとされているのが、業者のマージンの存在。要は「正規と同じような仕事をしているのに相応の、安定性を考えればそれ以上の報酬が得られても当然なのに、それが手に入らないのは、中間にいる業者がいるからだ。中間搾取は良くない」とするもの。派遣業の構造を考えれば、その主張こそが暴論でしかないのだけど、まぁ仮にそれを無くすとしたら、公的機関で統括するしかないだろう。誰もロハで働く人などいない。


要は人材のプール、予備兵力化を人材派遣業者単位で行うのではなく、労働人口における非就業者全体として行うようにすること。機動性は落ちるけど、マージンが無くなるので確実に働き手の手取りは増える。例えるなら、スーパーや八百屋さんで野菜を買うのではなく、直接農家から買い付けたり、路上販売店で購入するようなもの(ただしこの例えの場合、労働者は各農家の立場になる)。

システムを最適化すれば、そして例えばデジタルデバイドをクリアできるような仕組みを併用すれば、大いに普及する可能性はある。

ただ一方で労働力の公的機関による管理の強化などの非難があるかもしれない(それこそ国で派遣業者的なものを運用し、マージンをとらなきゃいいってだけの話になる)。第三者による能力判定のフィルターが入らないので、資格がより重視されるようになり、その点で問題が生じる可能性もある。自己判定・自己申告では、詐称された時に雇う側が受ける損害が大きなものとなる。別途第三者に能力判定をさせる? それでは派遣業者と何ら変わりはない。

そして大規模なマッチングシステムの構築がなされたとして。能力があるけど機会が得られなかった人は、より大きな対価を得られる可能性が出て来るし、見出されれば正社員への転換も期待できる。他方、需要にかなわない人は、失業状態が維持されることになる。弱肉強食感が強くなる感は否めない。

一時期は改正反対派の意見、主張ばかりが目に留まっていたけれど、最近では法案を精査した上で、「その反対意見、ちょっと違うのでは?」的なものも色々と出てくるようになった。双方を読み通すと、意見の間に潜む矛盾点やら、「伝えない自由」的な話もちらほらと。

まあこれも、リトマス試験紙の一つになるのかもしれないな。

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このページは、不破雷蔵が2015年6月15日 07:57に書いた記事です。

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