NDA(機密保持契約)と具体的な契約の違い、そしてお金の算段

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NDA(機密保持契約、秘密保持契約:Non-disclosure agreement)ってのは一般にはあまり聞きなれない言い回しであるけれど、あるいはGDPとかTPPよりも重要かもしれないもの。個人で自分の力量を発揮してお仕事をする人には、特にその可能性が高い。要はその名前の通り、「ここに書かれている事柄については秘密だから、第三者に語るのはナシよ」というナイショ話の約束を私文書で交わしたもの。もちろん契約だから、それに抵触するような事をすれば、こっぴどく叱られるし、下手すると賠償が発生したり、さらには裁判沙汰になる。

で、クリエイター系の人がお仕事の受注をする場合、大抵まずこのNDAの締結が求められることになるのだけど......指摘の通り、NDAを結んだからと言って、仕事をすることが義務付けられるわけではない(書類に「仕事します」と書いてあれば話は別だけど、普通はNDAにはそんなことは書いていない)。例えるなら、遊園地の入場料は支払っても、個々のアトラクションの料金を支払って楽しむ義務はないということ。入場料を払って中に入ったけれど、個々の遊技が高すぎるので様子見だけをして外に出るってのも一向に構わない。

もちろんNDAは結んでいるから、こんな契約をして仕事を依頼された云々ってのは、第三者に語っちゃいけないのは言うまでもない。


ゲーム開発とかデザイン、絵の類は技術開発に近いものがあって、多分に作業の目安がぶれるところがある。本当に細かく分散した上での下請け的なレベルまでいくと「カット何枚」って感じで作業量を明確化した上で受発注できるのだけど、それより上になるとどの程度の仕事を任せることになるのか、出来るのかの目安がつきにくい。定額保障で後は成功報酬......的な話が一番なんだろうけど(書籍の印税とかが良い例だな。初版分は出版社買取扱いで印税=原稿料でちょいと上乗せ、二刷り以降が出れば印税として、とかね)、それも難しいので、指摘のあるような原稿料まで完全に固めた上での契約は難しい。これが後程、支払いやら権利やらでもめる要因になるのは仕方ないのかな、という一面もある。

一方で、クリエイティブ面の多い仕事の場合、自分の創作物に対する権利はしっかりと把握し、主張できるものはボンガボンガと主張し、予防線を山ほど張っておく必要がある。直前のピクシビ周りでは、恐らくその辺はまったく無視されてるんだろうな。近所の絵の上手い人にちょっと絵を描いてもらって、お昼ご飯をごちそうした位的な。


これも指摘の通りで、お金の概念にはじまり、契約上の注意事項(NDAの話とか。折衝の上での留意点とかも。口頭でも契約には成りうる。錯誤が確認されればまた別だけど)とか、経済関連のお話とか、さらには保険やら確定申告の話やら。まぁ、この辺になると結局、個人事業主として必要なノウハウや知識ってことになるので、それこそ半年ぐらいのカリキュラムでがっつりと叩き込むだけの必要はあるし、その価値はある。今のゲーム・アニメ系専門学校にも求められるような内容ではあるのだけど、以下略。

......むしろ、個人事業主向けのカリキュラムを詰め込んだ専門学校なり通信教育講座を開いた方が良くないだろうかという感はある。賢いお金のやり取りも含め、それこそFPの資格を取れるぐらいの内容で。色々と応用は効くし、仮にサラリーマンなどに転じた後も、役に立つ話ではあると思うのだけどな。

ともあれ。NDAと個別契約は別物。NDAを結んだだけで、仕事の受注をOKしたわけじゃない。もちろんNDAを結んだ時点で、関連する話を口外するのは論外。それらしいことをにおわせるのもアウトで、関連事項が自分の生活に存在しないものとして日々を過ごし語る必要がある。におわせるのもダメ。そしてお金と権利周りについては、自分の時間を費やして生成したものである以上、真剣になって考え、権利を主張し、予防線を引いておくこと。そのための自己修練も欠かさずに。

それこそ、漫画家に限定されてしまうけれど、絶版マンガ図書館あたりでこのような話のカリキュラムを組めばいいんだけどなあ......。欧米だと業界団体がやってそうな気もするし。

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このページは、不破雷蔵が2014年11月29日 08:24に書いた記事です。

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