受けそうなウェブ漫画を原稿料ゼロで契約、コミック化で印税払いのみ...ウェブ漫画界隈でいま起きていること

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先日の【ウェブ雑誌ってどうやって採算とってるんだろうか】でもちらりと触れているけど、携帯電話と漫画の関係について、従来型携帯電話が主流の時代にちょいと中の人的な立場だったことや、携帯電話全般と漫画関連全般それぞれに興味を持ち、またその志向性や動線関連にも色々と思うことがある、さらにはウェブのコンテンツビジネスについて以前から多方面にチェックを入れていることもあり(要はあちこち首突っ込んだりリサーチかけてるってことね)、昨今のウェブ漫画の展開ぶりには深い関心を抱いている。お金周りの話はほとんど出てこないので、「どうやって儲けてるのかな」「描き手にちゃんと対価は支払われてるのかな」「紙媒体の連載と比べてペイメントはどうなんだろう」とかね。でも編集サイドや描き手の先生に、直に「いくらもらってます?」とか「雑誌と比べて原稿料はどうですか?」なんて聞けるはずも無く。

で、そんな話を色々と頭に浮かべていた所、こういった話が出てきたので覚え書きも兼ねて。


Pixivにじゅうたん爆撃をかけて、色々と無垢な人をターゲットにしていくという話は、その爆撃で誤爆を受けたプロの先生の人達の話を介して色々と伝わって入るけど、本当の話だったんだなあ、ということで。ちょっとナニがあれ。


この構造って、漫画に限らず、創作系の話ではよくあることで、仕事のラインを確保したい、顔つなぎをしたい、とにかく名声を得たいなどの理由で安請け合いし、業界全体の相場が下がってしまい、その「ラインを確保したい、独占したい」という願いはかなったけど、相場は決して持ち直すことが無く、結局自分自身の首も絞めるっていう結果に陥るのがオチなのよね。編集側はコスト落とせてラッキーと思うかもしれないけど、結局後発組が育たなくなるので、中長期的には業界全体も質が落ちてしまう。......いやあ、その、なんだ。前にも触れてるけど、似たような状況を某業界で体験したものだから。

今件の場合は「すでに掲載されているウェブ漫画を単純に紙媒体化して印税のみの支払い」がメインだけど、要は原稿料部分がカットされたって次第で、仕組み的には、「ウェブで初稿掲載」「まとまったらコミック化」とさほど変わらず。それにこれ、見方を変えると「受けそうなネタを拾ってきて媒体変えるだけ」の流し込み作業的な感もある(。そしてこれも前に触れてるけど、ウェブ上での読み方と紙媒体上の読み方は別のモノなので、そのままコンバートしても同じように受けるとは限らないのよね)。

ウェブ漫画のビジネスモデルって試行錯誤中の中にあるので、当然色々と暗躍してるところも出ている。今件のような「ウェブ上で受けそうなネタを探してそのまま掲載。原稿料は支払わず、印税のみ」というパターンが浸透すると、ウェブで初掲載でも掲載時は「載せてやるだけ」、単行本化されて初めて原稿料・印税というスタイルが、浸透してしまうかもしれない。これって、紙媒体の雑誌業界で一時期流行った(そして今でも行われている)、いわゆる「出版ビジネス」と同じ香りがるんだよね。

これがさらに進むと、ウェブ媒体は登竜門みたいなものだから、そこに参戦させてあげてもいいけど、対価としての原稿料は支払わないよ、人気が出て単行本化するだけのめどがたったら単行本化してあげる、そしたら印税を支払うね、みたいなものも登場するかもしれないな。「だってこれまで、ウェブで人気があった漫画をコミック化したときも、原稿料は支払いませんでしたよ?」みたいに。

さらに将来は「ウェブに乗せてやるから、参加料としての料金払え。単行本化したら印税払う」なんてところも出てくるのかもしれないな。もしすでにあったらどうしよう、とかちょいと怖い考えを覚えつつ。

でもこの仕組みって、少なくとも書き手にとってはいい話とは思えない。個人的には「だったらキンドルなり電子書籍なりのフォーマットで自己出版した方がいいんじゃない?」と思ったりする。そしてこれも以前に触れたと思うけど、より商品価値の高い作品を生み出すためのサポーター的フリー編集者に手伝ってもらったり、さらにはその類の「群雄割拠的な自己電子出版の漫画」の出版情報を集約して、概要や評価も合わせて統括するサイトを構築し、さらにそこでフリー編集のマネジメントを...って、この類の話、絶版マンガ図書館(旧Jコミ)あたりが手がけそうな気がする。

もっとも絶版マンガ図書館って基本的に既存出版社とは喧嘩しないところだから、それはそれで難しいかな。問題点があれば、それを解消することであらたな道が開けるってのは、どんな状況下にも通用する方程式ではあるんだけどね。


※今件に関しては雑誌の部門毎の慣習や時代による変遷の違い、さらには紙媒体とウェブ媒体でのルールの相違が結構あるようなんで、改めて触れることになるかも。「雑誌に載せないのだから原稿料ロハで印税のみが当たり前」という意見も出てきてるので......。

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このページは、不破雷蔵が2014年9月23日 08:17に書いた記事です。

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