2019年の還暦人(かんれきびと)に関する調査にかかわる報道

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還暦の貯蓄額、2千万円にはとても届かず。4人に1人が100万円未満―。プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険(PGF生命)は16日までに、今年60歳となる男女2千人を対象にしたアンケートの結果を公表した。例年行っている調査だが、「95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要」と試算した金融庁金融審議会の報告書問題が物議を醸す中で話題となりそうだ。

例の金融庁の報告書のマスターが手に入ったので、もりもりとツッコミを入れるマシンと化している当方。そういや先日PGF生命からこの調査結果の報告書が届いていたっけ......と思い返しながら中身を見てみたら、例の報告書と絡めてごく一部にスポットライトを当てて騒いでいる始末。報道もひどいレベルになったものだと実感。通信社が「話題となりそうだ」とか使うかね。

で、ツッコミとしては

一次資料は 2019年の還暦人(かんれきびと)に関する調査  www.pgf-life.co.jp/company/research/2019/001.html 。金融庁のくだんの報告書は家計調査の結果を基に分析したものでしかありません。また調査結果資料の限りでは、確かに現時点の貯蓄が100万円未満の回答者が24.7%いるのは事実ですが、同時に平均額は2956万円であること、回答時点で就業中の人が71.3%もいてその多分は退職金を受け取っていないこと(実際、家計調査の結果でも退職金を受け取る50~60代にかけて、急激に貯蓄額は増加する傾向があります)、そして金銭概念の変化に伴い、流動性資金と貯蓄の概念が曖昧になっているケースが多々あることに注意が必要です。


もやっとした印象的なワードに惑わされず、事実を見極めることが重要です。


ということを書いたのだけど、文字数が2倍ぐらいは必要だし出来れば図版を入れたいよね、というところ。共同通信では関連しそうなフレーズを並べて騒ぎたいというところなんだろうけど、調査の内容をよく読むと色々と「それはこの記事で使ったらあかんだろ」という話が盛りだくさん。そもそも定年退職前の存在が多分にあるにもかかわらず、貯蓄が100万円未満の人達に焦点を当てて騒いでいる。加え、貯蓄という概念そのものが随分と変質してしまっているので、流動性口座のところにぶち込んでいるのは違えている可能性も否定できない。住宅ローンの概念も吹っ飛ばしているし。


またPGF生命のコメントとして「格差が広がっている」ってあるけど、還暦人に関する調査はこれまで3度しか行われておらず、さらに貯蓄に関しては2回しか問われていないのだよね。つまり単純に前年との比較だけに過ぎない。傾向を見出すのには早急すぎると思うのだけど、どうなんだろう。

そもそも論として、事実を大げさに、紛らわしく、嘘も織り交ぜて大騒ぎ伝え、人心を惑わすことが報道なのかな、しかも通信社のやることなのかな、と何度目だろうこんなことを考えるのは。

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このページは、不破雷蔵が2019年6月17日 07:22に書いた記事です。

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