ゆうちょ銀行の送料有料化と金融機関の本業と

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2007年10月の民営化時から送金手数料を無料にしてきたが、日本銀行によるマイナス金利政策の導入で収益環境が厳しくなり、9年ぶりに手数料を復活することにした。


旧日本郵政公社時代、口座間のATM利用による送金手数料は1回120円としていた。07年10月に無料とする期限付きのキャンペーンを始め、これまで延長を重ねてきた。だが、日銀のマイナス金利導入で国債の利回りが大きく低下し、資産運用の収益が悪化しており、無料でサービスを続けるのは難しいと判断した。


数日前から未確定情報として挙がっていた件。昨日、ゆうちょ銀行から正式にリリースが公知される形となった。月に3回までは無料だけど、4回目以降は123円。窓口業務やゆうちょダイレクトでの料金はこれまで通り。

なお公式リリースでは料金改定の理由は一切なし。報道界隈では一様に「国債利回りが低下して稼ぎが減ったので仕方なく」的な形で一致しているので、事前リークの際にそのような話が出たのだろうなというのは容易に想像できる。

で、金融機関としての民間向け銀行って、資産運用が主業務だったっけ、的な。


リスクがあるのは当然として、市中に融資を行い、その利益で企業そのものを運営し、社会全体に貢献する。これが元々の銀行の第一業務であったはずなのだけど、その辺が全部すっとばされて、指摘の通りマイナス金利は悪いものだ的な印象のみが付加される形になっている。むしろ「銀行が本来の融資活動による収益でなく、黙ってても利益が得られる国債(リスクは事実上ゼロ。リスクが体現化する時には、どのような切り口での運用でも同レベルでのリスクが生じ得る)で利益を上げていたのが出来なくなって、本業をおろそかにしていたのがばれたけど、本業はサボり続けたいので副業的な部分の手数料上げるね、てへぺろー」的な。

そりゃあ、債券・金融関連の専門家やアナリストが総動員体制で、現状の金融政策にケチつけるわけだ。いわばこれまで濡れ手に粟的な利権に火が付いたのだから。高橋是清氏まで引っ張り出して来たり、バーナンキ氏に石ぶつけたり、挙句の果てには数年前の超絶円高施策へ戻れとか言い出したら、もう、こりゃダメだと認識するしかない。専門家の看板を真っ二つに自ら割ったようなもので。

バブル崩壊後の貸し剥がしを皆が覚えていて、借りなくなったので大変だからという意見もあるけれど、ならば失った信頼回復はどうすればできるのかを考えるべきであり。

というかそもそも日銀のマイナス金利政策って、そのための政策なのですけど。金融界隈に「ちゃんと本来の仕事しろ、本業の融資活動しろ。貸しはがしの過去で敬遠されているのなら、敬遠されないような対応をしろ」と。

「マイナス金利は悪い奴だから手数料が増えた」という伝え方は、分かりやすいけれど本質的な部分が盛り込まれていない、正しいとは言い難い説明に違いなく。で、あればこそ、だからこそ、報道界隈や専門家の人たちが、詳しく、優しく、そして正しく解説しなければならないのだけどね。

このような説明のされ方で思い出すのが、数年前の消費税絡みで「日本国債が暴落して日本破綻」「ハイパーインフレが起きて日本崩壊」とかお語りに成り遊ばされた金融・経済関係者の事案。中にはハイパーインフレの定義すらお間違えになられていた方もいたようだけど、まだお元気でしょうか。

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このページは、不破雷蔵が2016年8月18日 06:39に書いた記事です。

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