会社が従業員にベストを求めるのなら、会社も従業員にベストを果たせるような環境を整える必要がある

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これに至る前の話はちょっと今件からは脇道にそれる感があるので省略するけれど。最低限の賃金を払ったのだから常にベストを尽くせとの風潮があることは否めない。まぁ対価無しで働くと必ずいい加減になるってのは何度か以前に触れているけれど、だからといって対価さえ払えば必ずすべて全力で完璧を目指すべきだというのもちょいと違う。

そもそも「対価」ってのは金銭をはじめとした何らかの見返りの存在の有無だけじゃない。提供された労働力、労役、技術、時間に対応する価値の提供を意味する。極論として1円でも支払えば24時間365日労働させても問題ないってことになる(名誉技術者・役員による貢献・ボランティア的な就業の場合とか、自らに罰を課す意味で上級職が責任を持って行う就業の場合、報酬は1ドルってこともあるけれど)。

仕事を成す側がベストを尽くすのには、相応の状況設定が必要になる。それを整備するのが働かせる側の義務でもあり、全体として成功率を上げて効率を高めるポイントでもある。必要な経費をケチっていては短期的な利益率の改善は果たせるかもしれないけれど、中長期的には働く側の「ベスト」の上限が押し下げられてしまう。

これ、昨今の日本全体の社会構造の問題にも当てはまること。高齢者、とりわけリベラルを自称する富裕左派的な人達による「日本の成長はもう無い」「若年・中堅層はひたすらシニアに貢献するために働け」「お前たちの未来構築の種もみまでいただきます」的な意思表明とその行動は、現役世代の上限を押し下げ、成長機運を奪ってしまう。


正当な労働には正当な報酬・対価を。切り口を変えれば、正当な報酬が与えられる環境にあれば、人はどこまでも伸びる可能性が出て来るし、元々ポテンシャルがある人には成長できる機会が得られることになる。逆に、与えられる対価が頭打ちならば、それ以上のリソースを提供する必要はない。「今後配慮してくれるかもしれないから、今回は特別にサービス的な感じで」などと甘く見ると、相手はそれを当たり前だと思ってしまい、サービスは無駄になるどころか、今後もサービスを強要されるのがオチ。空気を読まないのがビジネスの成功の仕方だと考えられてしまう。

対価ってのは契約の保証金でもあり、相手を拘束するための肝でもある。だからこそ、無料で働くってのは基本的には責任も無ければ縛りもまったく無い。なので「無料で働きます。報酬は返上します」なるセリフは信用できないわけだな。

給料、対価分はしっかりと働く。しかしそれ以上をする必要はないし、求められてもやる義務はない。対価は自分に与えられた権限でもあり、その中でベストを尽くすべきである。当たり前の話ではあるのだけど。

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このページは、不破雷蔵が2016年8月 3日 07:53に書いた記事です。

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