「風力の発電能力、初めて原発抜く」は事実かもしれないけど、誤解を招くよね

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世界の風力発電施設の発電能力は今年、4億キロワットを超え、原発を初めて上回ることがわかった。発電コストが大幅に下がり、普及を後押ししている。今月の国連気候変動会議(COP21)で採択された「パリ協定」に基づき各国は温暖化対策として再生可能エネルギーを増やす方針を示しており、風力発電もさらに拡大しそうだ。


風が吹く時にだけ発電する風力は稼働率が30%程度で、80%近い原発に比べ実際の発電量は約3分の1程度とみられる。


......ということでパッと見だと「すげぇ、世界全体で風力発電だけで原発超えるじゃん」的な印象を有してしまう記事ではあるのだけど。色々な意味で「またあさ」的な感は否めない。

自然エネルギー系の発電形態では押し並べていえる話ではあるのだけど、「発電能力」は「期待発電力」とは別物なんだよね。例えば10万kWの能力を持つ火力発電所は、メンテ期間を除けば管理側の思惑の通りに10万kW/hの電力量を創生できる。ところが風力発電ではそうもいかない。同じ10万kWの能力を持っている風力発電所が、その能力を発揮して10万kW/hの電力量を創生できるのは滅多にないし、管理側の思惑通りにはならない。言うことをとてもよく聞くペットの犬と、滅多になつかない近所の地域猫との違いみたいな感じ。

仮に該当する風力発電所が、海外の峡谷のように常に一定方向に風が吹くような場所にあれば、それなりに高い発電力を期待できるかもしれないけれど、日本の場合はそのような適切な場所はあまりない。実際、今冬の電力見込みの試算表を観ても、風力発電は過去のデータで、出力は能力=設備容量の数%との実績が出ている。

しかも発電そのものが不安定。そのようなエネルギーを安定供給の公的ラインに載せるのは、本当は根本的な観点で間違っているんだよね。いつ出社するか分からない板前をいくら雇っても、日々営業している飲食店は開けないってこと。だから本来、太陽光なり風力発電は個人世帯、あるいは集団住宅ベース、よくて集落単位で用い、常用のインフラとして供給される従来の電力のサポートとして役立ってもらうのが、実は一番適していたりする。

その辺りもほとんど触れずに、単に能力が云々ってタイトルに挙げて喧伝するのは、単なるプロパガンダか、それとも羊頭狗肉か......いずれにしても、報道としての記事なら、評価は低いものとして認識せざるを得ない。

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このページは、不破雷蔵が2015年12月30日 07:02に書いた記事です。

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