「史料は無料で共有されるべき」と対価の問題

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先行する放送局からの質問周りと浅からぬ関係があるのだけど。そして「資料」ではなく「史料」、つまり資料の中でも歴史的に保存されている文献の類など、現物感の強い情報源であることに注意した上で。

史料を収集することの大変さと大切さは当方自身もよく知っている。だからこそ先日、電子書籍と資料の保存性に絡んだ話もしたわけで。【資料のネットアーカイブ化の利点と弱点と】とか【記録、情報の保全の難しさとメディアの特性と、そして手元の「資料」と】ね。

史料を持っていない人にとって、それが入手しがたいものの場合、それでも欲しい時にはやはり努力苦労をして入手するか、二次、三次史料を代替品にするしかない。それもいやなら、可能性としては有り得るのだけど、持っている人に「無料で公開しろ」と圧力をかける筋があるとのこと。少々耳を疑った。まぁ、公的機関の所有物ならライブラリ化するなどで、一般に広く周知されるべきだってのは正当性が多分にあるのだけど。個人ベースではちょっと、ね。例えば「所有者が亡くなって喪失してしまったら歴史的損害になるから、万が一に備えて対応を万全にしておくべきだ、例えば図書館への寄贈手続きをしておく」云々ってのならわかるのだけど。


最近は諸般の事情で、状況がまだ回復していないこともあり、そして当方自身の記事執筆における方針が随分と変わったので(不特定多数が容易に入手し検証できるような、例えば公的機関がウェブ上で公開している素材を原則として使う)、物理的な資料を溜め込むことはあまり無くなったけれど、一時は片っぱしから収集していたので、この気持ちは良くわかる。身銭を切った資料(今件では史料だけど)を無料で開放しろといわれたら、ちょっと常識を疑ってしまう......というかそれ以前の問題で、版元の許諾なくして無料公開したらダメだろ、でファイナルアンサー。まぁ、史料の場合は版元云々ってのがスルーできるものも多分にあるのだろうけど。

史料は財産になる。ある意味、投資対象ともいえる。それをタダで寄越せと言われたら、首をかしげてしまうのも当然の話なのだろうな。

まぁ、実のところ、デジタルデータでも似たような話は結構あったりする。一次ソースが無くなる、非公開になるってのは不思議な話ではないし、ましてや自ら創作した素材、音楽や絵などは、まさに史料と同じものだと考えてもいいんじゃないかな。「貴方の描いた絵が気に入ったのでうちが今度出版する本の表紙に使いたい。タダで使ってもいいよね? 元データ下さい」と言われるようなものと考えると、分かりやすいかな。

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この記事について

このページは、不破雷蔵が2015年11月 1日 06:57に書いた記事です。

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