「オリンピックのためにボランティアなエンジニアが必要、今後5年間で4万人」という話

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報道内容に齟齬があるのか、あるいは登場している人物の思考に齟齬があるのかはともかくとして。何度か読み直したけれど、「現在のエンジニアは企業などへの対応で忙しい」と「五輪そのものに対して、ボランティアで対応できるエンジニアが必要で、今後5年間で4万人のエンジニアを育てなくてはいけない」が連続している語りの中での文言となると、「遊軍的な存在として普段は他の業態でエンジニアとして働いており、五輪対応の際にはボランティアとしてセキュリティ方面でシフトできる存在が必要」「今はアップアップでそんなボランティアにシフトできるような状況ではないので、余力を持たせるようにエンジニア数を最低でも4万人増やさねばならない」と解釈できる。......えー、つまりその新規に創生された4万人は、五輪の際には無償働き(まぁ、お弁当と交通費位は出してくれるんだよね?)が前提な発想?

この直後に語られている「「過去30年間、IT分野の人材不足が指摘されているが、それが解消された試しがない」って、結局のところ十分な対価も合わせた環境が整備されていないからだよね。五輪の時にはボランティアが前提のエンジニア増強云々って語りを堂々としていると、そんな解釈をされても仕方がないし、実際のところはそれを否定できない。

上記で指摘されている通り、相応の成果に相応の報酬があれば、潜在技術者はもっとピックアップされるし、既存のエンジニアはさらに技術を向上し効率も高められる。それがなされていないのは、社会、企業の上でのシステム・構造の未対応に加え、人材を雇用し管理する側の選択眼にも多分に問題がある......まぁ、その実態を今件のお偉い様方の、多様な発言で露呈されてしまったようで。


そもそも高度な技術と経験、能力が必要なエンジニア、特にセキュリティ方面へ携わる人たちを安価で買い叩こうとかボランティアで何とかしようってのは、経団連が主張している移民誘致とか、企業の人員買い叩きとか、年金機構のバイト周りでのトラブル問題と同じで、前世紀の経済関係者の考え方でしかないのだよね。作業が単純労働のケースと同じように考えている(単純労働作業を卑下しているわけではないので、念のため)。そして年金機構がどのような体たらくになったのか、もう忘れてるのかな。

「4万人のエンジニアを育てなくてはいけない」のなら、「現在のエンジニアの環境を劇的に改善させる施策を打ち出し、新規参入しやすい土台作りをしなければ」、そしてさらに「派遣されるであろう4万人のエンジニアはボランティアではなく、相応の対価と地位を保証するように」としなきゃいけないのに。さらにそこから国家予算を組んでもらって雇用創出とするよう働きかけるべきなのに、該当業界の権威ならば。タダ働きに期待してどうする。

まずは関係者には「北風と太陽」を百万回音読してもらいたいところ。デジタル系のタスクとかスキルって、生成物が目に見えるものではないので、軽んじられているというか、下賤なもので、買いたたくのが当たり前、価値など無きに等しいという概念が深層心理部分にあるのでは、と思ってしまう。プレデジタル世代全般において。


色々と指摘があるけど、まぁ、最後の言及が適切かな、と。そして一連の発言をした各所のことは、覚えておいた方が良さげな気がする。恐らく当事者はピンチをチャンスに変える的なことを考えていたのかもしれないけど、ピンチをチャンスに変えるつもりが自分の大ピンチになるかもしれないよなぁ的な感じ。

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このページは、不破雷蔵が2015年10月11日 08:21に書いた記事です。

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