難民規制を全面強化するデンマーク

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デンマークの移民・統合・住宅省は今週、難民の流入阻止を狙った広告キャンペーンを開始した。「デンマークは難民に関する規制を全面的に強化する」という内容で、レバノンで発行されている4つの新聞にアラビア語と英語で掲載された。


広告にはさらに、新たに入国する難民向けの支援金を最大で50%削減する法案を議会で可決したこと、永住権を獲得するために必要な言語力の引き上げや、永住権取得までの待機期間を最短でも5年とする、といった条件が列挙されている。仮にデンマークでの一時的な保護が認められたとしても、最初の1年間は家族を呼び寄せることができない。


上の引用部分はとりあえず事実のみ。大本の記事は事実以外の部分、後半部分で特に記者の「語り」が多分に入って中立性に欠けるところがあるけれど、それをも含めて現在の欧州における移民・難民問題の難しさが垣間見れる話。


「仕事や社会活動を通じてデンマークに貢献できる人にとってはより魅力を増すための広告」との説明にある通り、少なくともデンマークにとって移民・難民のうち国の負担になる部分は、手が回り切らないとの意志を有していることになる。また規制内容をよく読み直すと「最初の1年間は家族を呼び寄せることができない」などにある通り、厳しい審査をパスして居住が許可された後、その当事者を呼び水として単独では許可されないであろう周辺の人達を呼び寄せて移住する人達が多分にいることが想起される。もちろんこれは国側にしてみれば、さらなる負担の増加になる。

どこで目にしたのか忘れてしまったけれど、この類の事案って、シンプルな構造で例えると、年金保険料を支払っていない人が、年金を受け取るような状況と似ている。人道的措置は大いに理解できるし、尊重すべき問題には違いないけれど、無い袖は振ることはできず、何よりもまずは自国民の尊重と救済とサポートを第一義にしなければならない。他人への救いの手を差し出すには、まず自分が差し出すだけの手を有する必要がある。種もみをまかずに手渡してしまったら、将来の自分の食い扶持が無くなってしまう。

先の記事でも触れているけれど、欧州にやってくる移民・難民がドイツやイギリスに大挙して押し寄せているのは、法令上優遇されていることや、経済的に富んでいることが伝えられているため。それだけの余裕がある、少なくともそう見られているからであるし、現状では事実そのような対応が成されている。

ただ、逃げてきた国の状況が収束しない限り、やってきた人たちはその場にとどまることになる。その間、負担は増え続ける。状況が回復しても戻らない、戻りたくない人も相応にいることは容易に想像できる。増え続ける負担に欧州はどこまで耐えられるか。あるいは負担を吸収して自らの力となり、さらなる飛躍を遂げることができるのか。

色々な意味で欧州は歴史的転換点を迎えているのかもしれない。恐らくは、早ければこの1年のうちに、小さからぬ動きがあるだろう。

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このページは、不破雷蔵が2015年9月10日 06:25に書いた記事です。

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