救急車は有料化すべきかとの問題に、リソースは無尽蔵で沸いてくる的な発想があった

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国の財政制度等審議会が救急車の一部有料化を検討するよう財務相に提言した。消防庁によると、平成25年の救急出動件数は過去最多の591万件と10年前に比べ約2割も増えており、さらなる増加が見込まれる。救急搬送者のうちほぼ半数は軽症者で、緊急を要する患者の救命に影響が出る事態も懸念されている。救急車を有料化すべきか否か、帝京大の新見正則准教授と、中央社会保険医療協議会の花井十伍委員に見解を聞いた。

本家サイトなどでも何度か取り上げている、救急車の有料化問題。料金発生云々を討議しなきゃならないのは、従来の無料システムでは社会的リソースが不足しはじめていること、なかば悪用的な形での利用が増えて本来利用するべき人にリソースが分配されない状況が生じつつあることを受けてのもの。

そのような前提があるにも関わらず、今記事では専門家の一人が「善意が前提」「他にやるべきことがあるはず」「無料だからこそ価値がある」「憲法ガー」と、まるでどこかで聞いたような切り口。現状を認識していない、あるいは軽視している感が強い。

他の社会保障システムでもよく言われる話ではあるけれど、人の善意や好意を前提にシステムを構築すると、その部分に甘えが生じてどんどん領域が拡大され、現場の負担が大きくなって、ある時ポキリと瓦解してしまうんだよね。「やってられっか」状態。善意や好意はあくまでもプラスαの部分で期待するのが筋であり、最初から予想に盛りこんじゃいけない。

今件については以前【救急車は特別先行治療の特典は無いし帰りも使えるわけじゃない】でも触れた通り、病院側で判断して「必要なかったよね」って時には治療代と合わせて後納してもらうのが一番だと思う。そしてもちろん事前に無料・有料のガイドラインを公開しておき、利用側も自己判断ができるようにしておく。

「タクシー代わりに救急車を使っている人がどれだけいるのか」とドヤ顔する意見が専門家の声としてあったけど、この話は現場から多数見聞きする。ただそれではやはり「一部意見に過ぎないキリッ」的な反応しか示さないのだろう。実調査による統計値が必要なのだろうな。もっとも搬送患者の約半数が軽傷者であることからも、容易に想像は出来るんだけどね。

またこの類の話では、「おや?」と首を傾げる意見では大よそ、公的リソースが無尽蔵に沸いてくるといった前提で考えているか、感情論が先行して論理的思考が後回しになっていたりするんだよね。無尽蔵に沸いてくる云々は問題外だし、感情論なり心理的分析云々ってのは、それで実態の状況が解決できるのならそれにこしたことは無いけれど、事実や実情を蹴り飛ばすってのなら、それを優先しちゃいけない。トリアージ的な考えが大切だよ。

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このページは、不破雷蔵が2015年6月17日 06:20に書いた記事です。

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