世界の創作はゼロから作れる方が簡単、かも? いやそうじゃない!?

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漫画にしても小説にしても創作物は多分に作り手の願望の体現化の一様式だから(もちろん時代の風潮に合わせて、って場合もある)、作り手の想い、願いが作品に反映されることは良くある。だから昨今の小説投稿コミュニティで異世界に転生する、あるいは足を踏み入れるって話が多いのは、現実逃避をしたい、今の世界の枠組みにとらわれない生き方をしたいという書き手の願望の表れかもしれない。江戸時代に憧れる人が自分の姿を主人公に投影し、作品を手掛けるってのは良くある話。時代が不景気になると空想・架空戦記小説が流行るってのとパターンは似ているのかも。


一方で、自分の願望による部分はもちろんだけれど、それに加えてリアリティの部分で「フェイク」を盛り込むのが容易ってのも異世界転生ものが流行る一因という指摘は的を射ている。現実に近いものほど、その考察がアレなものになるとツッコミが入りやすくなるし、作品としても面白みが無くなる。だからこそその枠組みがゆるい、ハードルが低い異世界の舞台が好まれる。何しろその世界では想像主が作者自身で、どのような世界も思いのままだから。つじつま合わせなどお茶の子さいさい。

ただしそれをある程度目に見える形にする必要がある漫画となると、話は別になる。面倒くさいからその部分の描写は別にいいやってことになると、「これ、異世界なの?」という違和感を覚えさせ作品を興ざめさせる(某四コマ漫画でタイムスリップものなのに、過去の世界のあれこれが現在と変わらず、周辺描写もそのあたりの考察がまったくなかったので、一気に興ざめしたものがつい最近あった)。


学園物の机といすの恐怖は良く知られた話ではあるけれど、それを別にしても世界観の上でのリアリティは小説同様、あるいは小説以上に漫画は必要......というのが当方の自論。まぁ、設定厨と言われてしまいかねないけれど。

可愛い子が出てくれば、カッコイイメカが登場すればそれで人気が出るからOK。それは一つの方法論で、それで成功した事例もたくさんある。その一方、しっかりとした世界観が構築され、そこからごっそりと切り取って披露する、それが体感できる作品こそが、面白みを持つんじゃないのかな、という気はする。

具体的に、はっきりと認識できなくても、何となく、雰囲気的にすっと入れるような、自然な感覚。ぎこちなさを覚えない流れ。例えるなら、1本1本が、巨大なジオラマから逐次一場面を切り取って披露するような、そんな前提の上での作品。表面的に見えるビジュアルやセリフ回しの奥に見える、その世界における風、香り。それが感じられるか否かは、どれだけしっかりと世界を創っているか否かが大きく影響してくるのだと思う。

まぁ、漫画にしても小説にしても、そこまで色々と考えて読む必要はない、単なるエンタメなんだからって言われればそれまでなんだけどね。考えなくても深層部分で感じ取り、それの積み重ねが作品への評価にもつながってくると思うのだな。

だからこそ異世界ものってのは自分で世界を創る分にはハードルは低いかもしれないけど、その異世界の世界観をしっかりと構築できないと(それ故に自分が好きな世界での話が望まれる)、良い作品は生まれない。要は作品の世界に対する作家の愛が大きく作品の良し悪しに係わってくるのではないかなあ。

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このページは、不破雷蔵が2015年3月19日 08:20に書いた記事です。

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