電子書籍周りの一考察、需要の変化と重版のアテの無さと「それにつけても金の欲しさよ」と

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書籍も含めた出版物の粗製乱造(種類の増加・一種類当たりの部数減少という意味で)、「品薄商法」と揶揄されかねないほどの余裕のない少数部数の印刷、品質周りの話。要はネガティブスパイラル的なところがあるんじゃないかという話。まぁ、それがすべてではないけれど、重要な一要素には違いない。

お金って結局もっともシンプルで確実で分かりやすいリソースだからね。リソースが無ければ物事は動かない。足りないリソースで今まで通りの成果を求めようとすれば、どこかに無理が生じてしまう。本が売れなければお金は手に入らず、少ないリソースで生成物を上げるために、材料にあたるコンテンツを買いたたく必要が生じてくる。で、作家へのしわ寄せってのもその一つの結果である次第。無論編集・印刷・出版会社の倒産やリストラ、経費削減などもあるけれど。


先日のマクドナルドの中長期的な魅力減退、また「生き甲斐感覚で安値請負のアルバイトが業界全体を云々」ってのでも触れているけど、削ってよい無駄の削減と、削っちゃいけない本質の部分の違いって、実は見極めが難しい。短期的にはコスト削減俺様天才、的な結果を出せても、中長期的には致命的な損失への道へつながる施策だったということも往々にしてある。そして困ったことに、この「中長期的に発生しうる損失が出るタイプのコスト削減」って、往々にして今のマーケティングや数量的リサーチでは判断がしにくいんだよね。そこから一歩引いて、それやって顧客側は喜ぶの? 事実に気が付いた時お客はどう思うの? と考えれば容易に理解はできそうなものなんだけど。

で、このようなお話が電子出版周りでも起きているという指摘。


ただこれらの考えって結局「現状維持」のみの考え方なんだよね。いわば種もみを食ってる状態。消費者、顧客は少しずつ慣れているように見えるけど、分かる人はやはりじわりじわりと離れていく。そしてそれが明確化するまでは、表向きは業績に違いは無いので、作り手側はさらに手を抜いていく。多数のお客が気が付いて、さっと引く状況になった時、手の打ちようが無い状態になっている、と。まるで将棋の山崩しみたいな。

さらに素材を作る側へのコストもばしばし削るわけだから、後発が育たなくなる。美味しい話が無いところに人が集まるはずもない。夢だから、好きだからは確かに業務を続ける動機になるけれど、暮らしていけなければ意味は無い。材料の作り手が減れば、業界は縮退し、品質も下がる。ああ、これはまさに昨今の人材不足周りの構造と同じ。

少なくとも「正直者は馬鹿を見る」世の中は、長くは続かない。昨今特に問題視している、悪質系なまとめサイト、自称キュレーションサービス、バイラルメディアなるものに、強い拒否感を抱いているのもそれが原因の一つだったりするんだな。

うん、やっぱりお金は大切。そして正当な努力は報われなきゃいけない。そうでなきゃ、世の中回っていかないよ、きっと。

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このページは、不破雷蔵が2014年11月 8日 09:28に書いた記事です。

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