一個だけの氷砂糖はとても美味しい、でもたくさんになると......

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今は衛生問題や子供に対する責任問題が何かとうるさいのでこんなことはまずないと思うのだけど(個人的にはむしろ積極的に、こういう作業をさせた方がいいと思うんだけどね、情操教育的にも)、夏休みのプールで終了時に何らかの甘味をちょっとばかりいただくことがあった。休み期間中にも登校したご褒美とか、体力を消耗したことに対する補給的な意味合いがあったのかもしれない。どれほど昔かは分からないけど、今と比べて昔の氷砂糖は随分と価値あるものだったのだろう。すこぶる魅惑的なその甘味に「もっと欲しい」と思うのも当然の話。


ところがある日プールに足を運んで見ると、プールはお休み。藻が発生して中に入れないとのこと。そこで掃除を手伝ったところ、ご褒美として、いつもは1個きりしかもらえなかった氷砂糖を好きなだけ食べて良いと言われた。ところがいざ舐めてみると、これまでの「たくさん食べたい、もっと欲しい」という願いがかない、夢心地のようなひとときを実体感できたにもかかわらず、なんだか釈然としない状態に。表記はされていないけど、「思ってたほど旨くは無かった」というものだろう。あるいは1個の氷砂糖で1の旨みがあるんだから、10個一度に食べれば10の旨みが味わえるに違いないと思っていたけど、1個だろうと10個だろうと氷砂糖の旨みは1でしかなく、頭の中にあった「10の旨み」が消し飛んでしまった、がっくりというところか。

食べ物の味覚に関する話では、こういうパターンは良くある。見た目がすげー良さそうでも、試食品をちょっぴり食べた時には美味しかったのに、いざ実商品を購入して食べてみたら、それほどでもなかった......とかね。それ故に、当たりを引いた時の嬉しさってのもひとしおなんだけど。

ちなみに芥川龍之介の「芋粥」ってのも似たような話。いつも芋粥をたらふく食べたいと言っていた下級貴族の人に、その願いを上級の貴族がかなえてあげようということで、山ほどの芋粥を用意したところ、その芋粥を目の前に食欲が失せてしまったというお話。人間の悲しい性(さが)は昔も今も変わらない、というところ。

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このページは、不破雷蔵が2014年9月17日 06:49に書いた記事です。

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