「遅刻で罰金」を親に課したら遅刻が2倍に増えたでござるの巻

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子供が遅刻する事情には多種多様なものがあって、元々子供が低血圧で起きにくいとか、親が怠惰で多少の遅刻などへでもないと考えていたりするとか、親自身も仕事などで多忙なため仕方がないからという場合もあったりで、一律にどうしようもなく悪い、と切って捨てると色々と問題が発生してしまう。しかしそういった裏の事情は別として、決められた時間を守らない「遅刻」という状況を許容するのはアウトなわけで。社会実験的に罰金を課したところ、その罰金を「遅刻の対価」的な形で受け止められてしまい、逆に遅刻が増えてしまった、しかも罰金性を止めても遅刻数は増えたままだったという、非常に興味深いお話。

暗黙の了解とか不文律の上でのルール、善意による自己犠牲的なもの、社会的な規範が一度明確な物差しで明確化されてしまい、数字で代替されると、もう二度と元には戻らないというお話。

フェイクとか、あるいは伝承の過程で色々と話が違ってきたのかもしれないな、ということで調べたところ、

イスラエルにおいて10の幼稚園を対象として20週間にわたって実施された実験です。10箇所のうち6箇所の幼稚園において実験し、4箇所の幼稚園は比較対象。


実験は次の3つのセクションからなる

ⅰ、1~4週間は何もせず遅刻する親を数える
ⅱ、5~16週目に遅刻した親に対し罰金を課す
ⅲ、17~20週目は罰金を廃止

その結果、罰金を課したセクションⅱでは、罰金を課す前のセクションⅰに比べ、遅刻する親が二倍近くにまで増加。その後罰金を廃止したセクションⅲではセクションⅱに比べ、遅刻する親は僅かながら増加する結果となった。罰金額は日本の価値換算で約500円。


ということでイスラエルで実際に行われた実証実験とのこと。原文は当然英語で結構なボリュームがあったので、とりあえずホールドだけど、グラフとかを見る限り、なるぼどねぇ、という感はある。詳しくは上の飲用記事でも解説されてのでそちらをご参照ということで。罰金の金額や社会的習慣などでも多分に左右される部分があるとしても、「遅刻する親を無くす、減少させる」という目標のために何をすべきかという点で、考えさせれる話ではある。

罰金の本来の意味である「ペナルティ」が、認可のための対価として受け止められてしまった、と。 そして今件での「罰金払えば遅刻も許されるんじゃね?」的な発想のベクトルが別方向に向いたものが、ネトゲの課金ブーストとかいうことになるんだろうな。そう考えるとますます興味深い。


指摘の通り自由奔放な状態では楽をしたもの=自分の便益を優先したもの勝ちになり、それでは社会的生活は崩壊してしまう。そこで一定の決まりを創り、インセンティブやペナルティで決まりを補完し、従わせる必要がある。その設定が大きな問題であり、考慮のしどころであり、今件実証実験ではその設定に失敗したからマイナスの結果が出てしまったと考えれば、納得はできる。

周辺環境、前提(英語の全文を読まねばならないし、イスラエルの社会環境、教育周りの前提)が不明なのであれだけど、今件ではどのような仕組みを作れば遅刻の母親が減り、皆もぎすぎすせずにハッピーになれたのか。その仕組みづくりを考えるのは、思考ゲームとしては面白い話となるだろうな。

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このページは、不破雷蔵が2014年9月27日 07:31に書いた記事です。

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