公知能力は企業たる出版社の大きな力であったはずなのだが

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連載開始前の第ゼロ話的な話をウェブだったかツイッター上で見て、どうも不思議な設定の話ではあるけど、これは描き手が描きたいなあと思っていた類の作品に違いなく、でも、だからこそ、売り方が難しいかもなあ、読み手を選ぶ可能性があるから特に......と思っていたら、こんな話が。

単に作品における販売能力が欠けていただけという考え方も無きにしもあらずだけど、そして好意的な解釈をすれば「よりセールスが望める作品を早く作ってほしいから、育てるのが難しそうな、現状では上手く育っていない作品へのリソース投入はストップしてほしい」という合理的な解釈による決断だったのかもしれないけど。なんかどうも色々ともやもやする。

ピンハネ商売という言い回しが適切か否かは別として。成すべきことの領域と、成していることの実情との格差がどんどん大きくなっている気が。本が売れない、利益が足りない、だから現場従業員のワークを減らして、作家に投げる。悪い意味での、日本的なリストラと何ら変わりは無く。


一回ごとに万単位の、取得ハードルが低い出版物を全国に向けて配本しているのにも関わらず、広報力が無いというのは、やはり色々と問題がある気がする。企業体として、その力を求められているのに、それをリストラのために作者に投げているとは、ねえ(この辺の話を考えると、コンビニから雑誌を減らしていくってのは、広報力の減退につながっていくからヤバいのかもなあというのもあるし、だからこそセブン-イレブンは逆に広報誌としてのヒーローズを展開し続けているのだろうなあという感もある)。

時代は変わり、環境も変化し、情報の質も変わってきている。雑誌、特に漫画の世界は大きな変化の中にある。今日先行して挙げたお話【漫画の新しい起用スタイル】もその一様式。「著者もリスクを負う代わりに、リターンが大きい形態の出版」とあるけど、キンドル出版が好例だよね。

「作家を育てるって何よ」という意見もあるけど、芽が出そうな作品や作家の、熟成期間を良い環境の中でホールドして熟成させるって意味ではないかなあ、と。昨今はリソースが無いがためにそういう役割を放り投げ(投資みたいなものだからねえ)、促成栽培的な、中途採用・即戦力的なものに手をつけ、「すぐに儲けられるものでなれば全部だめ」という感はある。

そう、デフレ時代の人材採用の手法そのもの。新人雇用して育てるのなんて面倒くさいし金がかかるし上手く行くか分からない。だったら新人がやるようなものはすぐに首を切れる非正規でいい、役立つ人材は中途採用、自分達は育てるのはやーめた、という感じ。


で、指摘の通り、即戦力的な人材が見出しやすいネットデビュー系の人が増えているのも「育てるなんて面倒くさい」的な出版社側の思惑が見えてくる。在野の人材がネットに転がっているので、そこから良い人材を拾って来ればよい。出版社側の人があちこちに出回ったり、投稿の受付をしたり、コンテストをする手間なんていらない。下手すりゃマクロを作ってRTやビュー数が一定以上になった画像をチェックして、そこから漫画っぽいのでウケがよいものを自動抽出するようにして、精査すればいいじゃん、なんてことになりかねない。いや、それが効率的だからってのなら、それはそれでいいのだけど。

ただ、そういう手法だと、出版社側の人育てのノウハウが不必要になる。すると当然継承されなくなるので、出版社側で人を育てられなくなる。すると、出版社の存在意義が一つ失われてしまう。広報力が落ち...というよりはむしろ放り投げ、人材の育成もしない。あとはどれだけの意義があるのだろうか。

漫画に限らず情報の価値や性質が大きく変化している中での試行錯誤、四苦八苦の過程としての状況ではあるのだろうけど。目先の小銭に気を取られていると、お尻についた火に気が付かないままでやけどをしてしまうような。昨今の「人手不足危機、倒産」で、今まで人を囲い、育ててこなかった界隈が頭を抱えてきりきり舞い状態になっているのと同じような状態になる気がするのだけどね。

まぁ、それは自業自得ではある。種も蒔かずに水もやらず、育てずに、「どうして実がならないんだ」と怒っても仕方が無いお話ではある。

            

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このページは、不破雷蔵が2017年12月 3日 08:03に書いた記事です。

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