通信社の信頼性は所属する記者一人一人の品質と、それをたばねる組織の統率力にあるのだけど

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先日の「私たち記者は正義、がんばる」に続き、AP通信の東京支社で女性記者という共通項を持つ記者による、問題記事の指摘。詳細はまとめてあるトゥギャッターで多分に指摘されているのでそちらに目を通してほしいのだけど、日本人なら英語記事はまず読まないだろう、読んでもツッコミをしないだろう的な思惑を多分に含み、記者個人の心情的なものをもりもり事実と差し換えて、事実として配信している。

先の「がんばる」の事案も合わせ、AP通信本社では状況を把握しているのか、していたとしてどのような姿勢を示しているのか、かなり確認したい話ではある。

そういや「私たち記者は正義、がんばる」も女性記者。この類の話って、女性ならちょっと遠慮してもらえるとか、目をつむってもらえるとかいう計算もあるのだろうか。男性記者が同じようなやらかしをしたら、もっと加速度的に叩かれているような気がする。詰まるところ、先の都知事選や「女性の壁」問題と同じように、「配慮してもらえるに違いない」を逆手に取っている雰囲気すらある。

報道の自由、言論の自由は、一般の不特定多数の人に多大な便益をもたらすからこそ保証されねばならず、そしてそれは過去の人達の不断の努力によって成し得たもの。それを濫用し、多数に不利益をもたらす個人の、あるいは特定少数の目論見に利用すると、自由に対する正当性が損なわれてしまう。

であるからこそ、このような事案に関しては、報道や言論界隈が率先して、自主的にやらかした当事者に対していさめるような動きをしなければならないはずなのだけど、その動きは見られない。まぁ、何度か指摘しているけれど、この類のは労多く、益少なしが理由なのだろうけどね。

と、なると金銭的損得を考慮しなくて済む、公的機関によるチェック機能の導入的なものも必要なのかもなあ、と思ったりする。あるいは海外でよく見られる、財団法人みたいなものの創設とか。仕事として、不正な、不当な報道を精査し、指摘し、公知するような機関。無論、色々と問題を危惧する面もあるだろう。しかしながら、今件のようなケースが相次ぎ、具体的な対応がままならず、自主的な、当事者の誠意に期待する云々という、意味の無い対応策ばかりが語られ、やらかした当事者は「痛い目にはあわないぞ」と学習してよりエスカレートする以上、状況改善のための施策は考察する必要がある。さもなくば、報道の自由、言論の自由が不特定多数の便益をもたらす以上に不利益を与えることになり、自由であるべきとの正当性が失われる。

もとより、デマを事実として語ったり、自身の想いを事実として勝手に盛り込むような記者が多分に存在し、それが公知されても何らお咎めが無く、訂正もなされない。それが果たして「報道」の名を掲げる存在としてありなのか否か。......まぁ、朝日新聞の二つの吉田問題のような例もあるからねえ。報道・事実と、言論・オピニオンは別物。それをごっちゃにしたら、まさに羊頭狗肉でしかなく。

今件に限れば、AP通信は他社に記事を配信する協同組合なのだから、「記者の好き勝手にさせて放置する機関紙」では困ってしまう。加え、AP通信は「事実そのものを書く」スタイルが特徴で長所なのだから、今件のようなことが放置されたのでは、「他の記事ももしかしたらそうなんでは」と思われてしまうことから、その信頼性が著しく損なわれかねない。AP通信にとっても無視できない話だと思うのだけどね。

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このページは、不破雷蔵が2016年8月 6日 08:08に書いた記事です。

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