「アニメを観ていた、グッズを持っていた、好きそうだった」は報道として必要な情報なのか

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寺内容疑者の実家は大阪府池田市にある。市立小を卒業後、大阪教育大付属池田中、同池田高に進んだ。高校時代の同級生によると、女子高生が主人公の人気学園アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」に熱中し、カバンには同アニメのキーホルダーを付けていたという。

事案そのものは現在も進行形で状況が把握できない点も多く、ましてや不明確な状態で云々できるタイプのものではないのでさておくとして。今件では加害者側がいわゆる「オタク」的な像を持つ、一面を有しているとの情報があることから、複数の報道でそれをことさらに強調する動きが見られる。今件は新聞報道ではあるけれど、これを一次ソースとしてテレビのワイドショーでも同様のスポットを当てた形での伝え方がされているのは確認されている(新聞報道を一次ソースとするテレビ番組ってのも、おかしな構造ではあるけれど)。

で、ある特性や趣向が行動様式に影響を与えたか否かは、単なる相関関係だけでなく因果関係まで考察をし、その上で「報道」しなければならない。報道はプレスであり、事実を伝えるのが一義的なものであり、そこには極力推測や誘導的な情報の切り貼り、そしてもちろんウソ偽りや誇張は避けねばならない。受けが狙えるから、それっぽい方が分かりやすいから(正しい必要は無い)との理由で、抗議が来にくいサイドを叩いて視聴率ゲット、読者わしづかみだぜ、的な方法論は、そろそろ止めてほしいもの。

今件は見方を変えれば、制作サイドが多分に因果関係が推測できると判断した上での伝え方をしている、と見ることもできる。ハルヒがどうとかキーホルダーがこうとかいうのは、現時点で報道として必要な情報だろうか。このような伝え方は新聞社が、番組が該当ジャンルに対し、多分に偏見を有していることの暴露でもある。


このような話としてはかつての宮崎某事件が良く知られているけれど、記憶に新しいものとしては秋葉原でのナイフ事件がある。あの時はまだインターネットの黎明期、普及が始まったころではあったけど、世論はこうなんだ的な誘導調査が行われたことが記録に残っている、という当方自身が残していた。この類の「このような結果へと導きたいとの意図が見えるアンケート」ってのは今でも多数見受けられるので注意が必要。


キャプチャ画像がよくネット上に挙がる、映像作品としての社会風刺的なフェイクニュース。要は伝え方次第でいかなる存在でも怪しいものに仕立て上げられてしまう、犯罪に係わる忌むべきものだとして印象付けられてしまう、良い啓蒙映像に違いない。


テレビに限っても、ストライクでテレビに影響したとの話が出てもスルーされたり、他社番組のバッシングネタに用いるなど、「報道ってどこにいったのかな」的な事案が複数あると指摘されている。まあ、アレだ。昨今報道の質が云々とあるけれど、むしろ昔も今も変わらず、昔は単に可視化できなかっただけなのかなあ、という想いがちらりと頭をよぎる。


相関関係と因果関係を(意図的に)ごちゃごちゃにしていると、このような報道すら可能になる。同じような例えは秋葉原のナイフ事案の時にもしたのだけどね。いかにこの類の報道のたちの悪さ、意味の無さが改めて認識できる次第。

今件事案は今後色々と情報が出て来るに連れて、報道界隈が色々といじってくる可能性は否定できない。読者、視聴者の好奇心に応えるために云々っていう大義名分をぶん回し、アニメやネットを叩く、あるいは叩きのあおり材料とするかもしれない。誘導的な報道、事実無根な話、非論理的な話には、ツッコミを逐次入れていく必要があるんだろうな。

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このページは、不破雷蔵が2016年3月30日 06:44に書いた記事です。

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