フィンランドで「国民全員毎月800ユーロ(11万円)のベーシックインカム支給開始」なる話とその内情

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フィンランドが国民全員に非課税で1カ月800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給する方向で最終調整作業に入ったことが判った。


ベーシックインカム支給に要する総予算は522億ユーロ(約7兆円)にも及ぶこととなるが、ベーシックインカム支給と共に、政府による他の全ての社会福祉支給が停止となる予定ともなっており、政府は複雑化した社会福祉制度をベーシックインカムに一本化することにより、間接的な費用の支出を抑えることもできることとなる。


昨日ネット界隈を大きく騒がせた、フィンランドのベーシックインカムの話。導入理由が社会福祉の簡素化と、それによって生じる手間を減らして経費削減って発想は「ああ、その発想は無かったわ」的な。国民が税金を支払うことで受ける社会福祉的恩恵の内容はケースバイケースで額面化するとひとそれぞれになるのだけど、その多分を均等化してしまって最初に現金で配ってしまおうというもの。

これまで国から社会福祉的恩恵を5万円分ぐらいしか受け取っていなかった人にはラッキーってことになるし、20万円分ぐらい負担してもらっていた人は頭を抱えるようになる。ある意味公平だけど、ある意味差が出る。

でも予算繰りはどうするのだろうとか、小規模で新興国的なところならともかく、フィンランドのような規模の国家でそれが可能なのかどうか、ちょっと頭を傾げる次第。


海外における同様の主旨の記事。スイスの議会での反対内容もなるほど感はある。フリーライドを防ぎきれるのかとか、かえって手間が増えないのかとか、社会福祉を受けている人に不公平が生じないかとか。資料のさらなる掘り下げをしていないので何とも言えないけど、社会福祉には年金事業も含まれているはずだから、年金の支払いもこのベーシックインカムに一本化されるんだよなあ......。

なお同じようなことを日本でやるとしたら、日本人口を概算で1.3億人、月あたりのBI(ベーシックインカム)を10万円とすると、年間156兆円が必要。日本では無理。財源確保のために、現行の経済規模・状況で消費税率1%につき該当税収が2兆円と試算できるから、消費税率を70~80%位に引き上げれば可能になる......というのは数字合わせ的な戯言でしかなく。

てなバカなことを考えていたら。


という話。あわてて調べ直してみると確かにその通りで、あくまでも現時点では検証・実証実験云々の話であり、フィンランド全体でなんてのはまだ全然決まっていない。いわゆる実験君段階。


トリガーとなった海外報道などを受けて、ふぃらんんどの社会保険庁KELAでも最新のリリースとして「違うよ、全然違うよ」的なリリース。要約すると「変な報道で誤解されてるけれど、ベーシックインカムについては現時点で検証と予備研究計画だけだよ」「複数モデルで実験をする予定」「官僚機構の簡易化と複雑な配分システムの合理化が目的」。後は上記フィンランド公式アカウントがツイートした内容と同じ。実験の結果では「やっぱり無理だね」的な結論に至ることも多分にある、と。今後の展開には期待したい。

それにしても、今件のフィンランド式BIの発想は面白い。社会福祉の多分を、別の視点で公平化するという切り口。この発想は何か別の思考ゲーム的な感じで活かせないかな、と。

例えば日本での試算の場合、全体に適用するから計算上無理がある。BIの提供と社会福祉方面の金銭面での撤廃を未成年者と高齢者のみに適用して、未成年者では医療方面など社会保障も一部残すとか。色々と思考ゲームのソースになりそう。母子・父子世帯問題もある程度上手く行きそうではあるし、年金保険料の支払いが無くなるので現役世代の負担も軽くなる。

色々と計算のネタにはなりそうではある。

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このページは、不破雷蔵が2015年12月 9日 07:29に書いた記事です。

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