本売れぬ きっと悪いの 図書館だ 「新刊貸出し やめるべき」とな?

| コメント(0)
公立図書館の貸し出しにより本が売れなくなっているとして、大手出版社や作家らが、発売から一定期間、新刊本の貸し出しをやめるよう求める動きがある。背景には、深刻化する出版不況に、図書館の増加、サービス拡充もある。本を売る者と貸す者、相反する利害のはざまで、出版文化のあり方が問われている。

以前公的機関のデータを元に図書館の利用状況の精査を行った際にも、「図書館が盛況になればなるほど書店で本が売れなくなる」との意見をいただいており、まぁ、こんな話が出てくるのも不思議では無い。

でも引用元の記事に掲載されているグラフを見れば分かる通り、図書の貸し出し冊数と書籍の売上推移ってのは、かつては同じような動きをしていた。貸し出し冊数と書籍の売上高が相反する動きを示したのは、前世紀末からなんだよね......ってグラフがすげぇ雑だな、これ。典型的な悪しきグラフ。機会があれば再精査したほうがいいぞ。まぁそれでも増加・減少ぐらいは判断できるか。

で、今件の「本が売れないのは図書館のせい」ってのを読んでみると、どうも書籍に関する需要を「買うか買わないか」の二元論だけで考えている感が強い。あるいはそのような意見をした方が、色々と突っ込まれなくてよいと考えているのか。

印刷物を欲しいと思ったことを想定すれば容易に理解できるのだけど、実際にはその二元論では絶対に説明できない。どれほど高くても、絶対に欲しい。内容次第では買ってもいいかな、コスパしだい。内容もコスパも今一つだけど、定期的に買っていてこの号だけ抜けるのはいやだし、的な状態。表紙を見て、ああこれは面白いカモと衝動的に。いわゆるグレーゾーン的な需要で、どちらにでも傾倒しうる状況ってのはたくさんあるし、購入した・しなかったいずれにしてもその内心にはさまざまな感想がある。雑誌のアンケートで「どの点がよいと思いましたか」の項目に複数の選択肢がある事を思い返せば、そのあたりは容易に理解できるはず。

そして「買うゾーン」にある心境の濃さはさまざまで、ちょっとしたきっかけで「買わないゾーン」にシフトする。逆もまた真。そのきっかけが他人のオススメ、懐の余裕、図書館や本屋での精査、ネット上での「こんな書籍もお勧めです」。人の行動性向は二元論などでは絶対に説明できない。それを単に図書館で読んでしまうから買わないとするのは、余りにも強引すぎる。

第一具体的かつ大規模な調査対象母集団による統計データが無い。また似たようなパターンは良く聞く話ではあるのだけど、「図書館で済ませて購入しない人」のうち、どれ程の人が「図書館で無ければ購入する人」となるのか。「図書館で無ければ買わない、別の本で代用するか読まない」で済んでしまうのではないか。それよりも「図書館で済ませて、その存在を知り、(該当誌、あるいは類似の他誌の)購入動機にシフトする」効用を考えた方が良いのではないか、とかね。

当方も実際にあるからね。そのパターン。ネット上で公開されているウェブ漫画の広告を見て、実本をその広告のリンクをたどって購入して、ファンになったってのがさ。


今件に関しては多様な方面から意見が寄せられていて、当方の目に留まる範囲でも結構色々と「なるほど」と思わせる切り口のものがあった。電子書籍に関して、大部分のフォーマットが「閲覧できる権利でしかなく、手元に元データは残らない」っていう問題がクローズアップされる中、色々と考えさせられる。

音楽CDやゲームのパッケージソフト、ビデオソフトでも、似たようなパターンがあった気がするのだけどね。●×が悪いと声を荒げれば、大よそしばらくの間はセールス減退の責任を回避できる。一因には違いないから嘘では無いと強弁もできる。そして気が付くと問題の本質部分でどうしようも無くなってくる。かじ取りをしている人達の考えが前世紀的、情報のアップデートができていないなどが要因なんだろうなあ。

第一、逆の言い方もできるってことに気が付かないのかな。「図書館の貸し出しで済んでしまうほどの、購入するのには値しない価値だということを、自ら認めてしまうのですか」と、ね。

ただ一方で、こんな話もある。


......となると、やはり現場の映像公開、議事録の開示の必要性、新聞媒体の報道としての機能の喪失という問題が出てくることになる。紙媒体そのものの問題には違いないけれど、今件は主軸がちょいとばかりずれてくることになる、かもしれない。

関連記事             

コメントする

            
Powered by Movable Type 4.27-ja
Garbagenews.com

この記事について

このページは、不破雷蔵が2015年10月30日 08:22に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「スーパーカップにレアチーズケーキ味なるものが登場するよろこび」です。

次の記事は「キリンは「キリンキリン」と鳴くんじゃないんだねえ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

* * * * * * * * * * * * * *


2021年6月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30