テレビで「オタクはこの10年でカジュアル化した」的内容が語られていたという話

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日本テレビのニュース番組「ZIP!」で、「リア充オタク」が特集され、朝からTwitterが盛り上がっています。「リア充オタクってなんだよ」「元々オタクはリア充じゃないみたいな言い方やめろ」というツッコミや、「それは本当にオタクなのか?」という議論も。


特集によると、チェックのネルシャツ姿でメガネにリュック、ひとつのコアなジャンルに詳しい――といった昔ながらのオタクは今では減少傾向にあり、かわりに今では「リア充だけどオタク」な人たちが増えてきているのだそう。


そもそも「オタク」なる言葉が由来はともかく世間一般的には侮蔑的、語り手側から見れば下層にある状態の対象、または語り手側が理解しがたいジャンルに対して濃い傾注をしている状況を意味する形で使われている以上、差別用語的なものでもあることから、テレビ放送で使う事自体がどうなんだろうかなあ、という話もあるけれど(同様の趣味への傾注をしていても、専門家とかプロフェッサーとか愛好家とかマスターとか色々表現はあるんだよね)。

今件では平均消費額が10年近くで落ちた、オシャレ系のが増えたと「分析」し、リア充オタクが増加した、それはインターネットが流行ったからだという説明をしている。

......えーと、何か新しい言葉を流行らせようとしてるだけかしら的な、カルチャーの分析観点から評価すると、評価Fぐらいな、みたいな。というか、「これがネットで流行っています」とテレビで語られてるけど、実際には全然聞いたことないよ、的な違和感しか出てこない。

今件データは2004年分は野村総合研究所が2004年8月24日に発表した「~「オタク層」の市場規模推計と実態に関する調査~」から、2013年分は矢野経済研究所が2014年12月9日に発表した「「オタク」市場に関する調査結果2014」から取得したものと考えられます。従って、調査様式、対象などは全く別のもので、単純に「オタク」というキーワードだけで同一視して比較したものであり、話のネタ以上の価値は無いものと考えられます。両方のリリースとも現在でもウェブ上から閲覧できますので、詳細はそれぞれの題名で検索してご確認ください。


なお2004年の値「およそ10万円」は資料にある「人口20万人」「推定市場規模200億円」から単純に試算したもので、しかも市場推測指標はタイトル当たりのDVD売上枚数によるものです。また2013年の値は厳密には2万5096円となっています。


そもそも今件の一次ソースをたどると、2004年の方はオタクじゃなくてマニアの市場分析でしかないし、別々の調査様式だから一概に比較はできないし、さらに双方とも「アニメ好き」をオタクとしてカテゴライズしているあたり、番組の創り手側の恣意的な想いがじわりとにじみ出ているのが分かる。

まぁ、あまり濃い趣味を持たない人から見れば、偏執的な趣味趣向を楽しんでいる人は変に見えるのだろうし、それが自身に理解できないものであれば下にみたいという気は理解できなくもない。残念ながら人は誰しも、そのような部分を持ち合わせている。しかしそれを体現化して良いか否かはまた別物。さらにそれを助長するような、軽薄な形での「分析」を、不特定多数に向けた公共の電波に流すのは、それが例えウケが良いから、面白いから、集客ネタになりそうだからといって、良いものでは無い。

視聴者が求めているから仕方がない、という反論もあるだろう。でもそれは単なる責任回避、言い訳でしかない。それは視聴者が求める一要素でしかなく、それを取捨選択して用いたのは、放送側だからね。

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このページは、不破雷蔵が2015年10月10日 07:35に書いた記事です。

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