「俺ができたんだから、お前でもできるハズ」は案外罪深い言葉、かも

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才能を持ちそれを発揮した人が、周囲の人や部下に対し「自分が出来たのだからお前もできるはず、だから頑張れ」という励まし。本人にとっては当たり前のことが他人に出来なくてどうする、そんなことはないだろうという、自分を平均的な存在として考えてしまうからこその言動で、多分に悪意は無く、むしろ誠意をもって語る相手の引上げを望んだ上での言葉に違いない。

ただ、啓蒙系セミナーの場合ならともかく、多くの場合、このような比較は相手にとって結構な負担となり、さらに悪意にすら受け止められてしまう。それは特に語り手が特異な才能を発揮していたり、大きく成功した場合に生じる。親が子供に「自分でも出来たのだから」と怒ったり、兄弟姉妹を比較対象として「同じ子供だからできるはずだ」と無理強いする場合も同様。

実際には個人差というものがあるのだから、出来ないこともある。環境も大きく異なる。出来るかもしれないけど、そこに至るまでの努力など必要なものが段違いになる場合も多い。にもかかわらず、自分という成功事例があるから、それを鵜呑みに考えてしまう。先の「すき家」や「ワタミ」の労働環境問題が好例だよね。経営陣が出来たのだから、部下も同じようなことはできるはずだ、その前提でやってしまう。この辺りは以前も説明したかな(自分もこんな感じで言われて、随分と頭を抱えた経験がある)。


曲がりなりにも成功しちやったのだからインパール作戦はないと思うけど(汗)、むしろ真珠湾攻撃や第一段階作戦あたりとした方が......というマニアな話はともかくとして。指摘の中の「今の給料が低くても将来の昇給と安定した年金が保証されている時代であれば人間は頑張れる」。これ、非常に重要な話。現在の苦境の中でも頑張れるのは、未来が、将来がそれよりも明るいとの道筋が見えているから。今の若年層に覇気が欠け、消費が減退している大きな要因もここにある。

少しでも今日より明るい明日にするためのリソースが、シニア層に吸い取られてしまっているから、若年層がなえてしまっている。その姿を見て、吸い取っているシニア層側が糾弾するという、マッチポンプというか、スパイラル状態にあると考えれば、現在の社会構造は案外すっきりと理解できる。そして高齢層が若年層に「自分達が出来たのだからお前らも出来るはずだ」ということの、いかに理不尽な理由も。


せめてこんな感じで(一部誤認もあるけれど)、自分の後に続くものを育てて面倒を見るという気概を持つ人が(企業などの上に立つ人、高齢者に)多ければ、世の中ももう少し良くなるのだろうけれども。

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このページは、不破雷蔵が2014年9月24日 08:11に書いた記事です。

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