米大統領選挙と、電話や対面調査の限界と

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今回の米大統領選挙では民間の調査会社における調査結果のほとんどが空振り三振的な状態だったことでも大きな話題を呼んでいる。分析も一部で進められると共に、回答した人たちの声として、本心を告げると冷笑されるとか攻撃の対象に挙がる可能性があるので、怖くて本当の意見を語れないの話が多々見受けられる。これもまた統計を取らないとどこまでが本当なのか、どれほどがそのような意見なのかまでは分からないけれど。

調査するメディア側が多分に、片方の候補者に肩入れし、もう片方への支持をはばかるような姿勢を見ていたのも、大きな「本心を告げることへの懸念」があった感は強い。日本でも電話世論調査で、調査側の意図している方向性の意見が聞かれないとすぐに調査が終わってしまう的な話は聞いたことがあるし実体験もあるけど、それをもっと加速させたような。加え、米国では元々従来のメディアへの信頼性が低いってのもあるのだけど。ただ、ネット関連の調査会社でも似たような結果が出ているので、やはり対面や電話調査による、回答したことが第三者に漏洩してしまう「かも」との懸念が大きいのだろうな。

例えばコロッケかメンチとか、カレーの肉は牛か豚か的な、思想や心境、回答することによって何らかの不都合が生じる可能性が無い調査なら良いけれど、今回のような場合には、調査をする側の極力公正中立さと、匿名性が必要不可欠となる。電話や対面、郵送調査はメディアギャップが低いことで重要視されているけど、匿名性の点では疑心暗鬼に陥ってしまう。なにしろ電話や対面では、人とのやり取りになるのだから。

今件でふと思い出すのは、先日、日本の新聞協会が年一の調査結果をしたこと。今年分はこれまでにも増して、新聞が電気事業界隈や選挙において重要な役割を果たしているとの自己主張が垣間見られる設問を多数見受けている。しかし現状では、それら方面の内容は、米国のそれと同様に、公正明大・中立姿勢を貫いているとはいえず、誠実さの点で落第点を与えられつつあるのが実情。恐らくは遠くないうちに、日本の報道界隈も、似たような道を歩むのだろうな、という気がする。

もちろん日米を問わず、「公明正大・中立」が報道の義務であるはずは無い、との主張もある。が、それは報道では無く、広報や論説、喧伝、機関紙でのお話となってしまう。また米国では多分に自社スタンスを明らかにした上で伝えているからまだマシだけれど、日本の場合は多くが自らは「公明正大・中立」であると宣言し、あるいは法的な縛りがある。その上で、実態としてはそうでない状況にある以上、信頼が崩れるのは米国以上に早いのかもしれない。

他方、今件に合わせ、ビッグデータ云々に関して。無機質なもののデータならともかく、人間が多分に関与する場合、「回答する際に自分の本心、本当に行動する予定の答えを語ると、問い合わせをしている相手(や自分の周囲にいる人)になじられる、にらまれるかもしれない」といった、完全秘匿性が守られていない可能性に関して、先の都知事選でも言われていたなあ、と思い返してしまう。

調査対象母集団そのものの選別の時点で問題がある場合は別として、無作為抽出でも「電話応対」では自分の回答内容が暴露される可能性が否定できないと回答者が認識している限り、その結果リスクが生じうる設問の信ぴょう性は著しく落ちる事になる。何しろ対面にせよ電話にせよ、応対しているということは、相手は自分のプライバシーに相当まで踏み込んでいる。その時点で本心を語ってしまって、その後何かされないかと不安になるのは当然の話。今の中国や北朝鮮で、「国家運営組織に忠誠を誓いますか、それとも疑いを持ち反発心を抱いていますか」と調査をするようなもの。

ツールに関わるハードルが低いのが電話応対調査の利点ではあるけれど(日本の場合は郵送調査も合わせ)、今後はデジタルデバイドを考慮しても、より秘匿性が高いインターネット経由の調査の方が、一層重視されることになるのかもしれない。

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このページは、不破雷蔵が2016年11月11日 07:28に書いた記事です。

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