2011年8月の新設住宅戸数、前年同月比14.0%増
国土交通省は2011年9月30日、2011年8月における新設住宅戸数のデータ(建築着工統計調査報告)を発表した。それによると8月の新設住宅着工戸数は前年同月比で14.0%増の8万1986戸となり、先月の増加から続いて5か月連続の増加を示したことが明らかになった。着工床面積も5か月連続・14.5%の増加を見せている(【発表リリースページ】)。具体的な内訳は持家が6.9%と2か月連続の「増加」、貸家は9.8%の「増加」、分譲住宅は31.2%の「増加」。今月は先月同様に全項目でプラスを記録したが、上昇分が先月から減退しているのが気になる。
耐震偽装問題をきっかけに行われた2007年の改正建築基準法施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際が、同年夏以降の住宅市場における混乱や、新設住宅戸数の減少、そして不動産市場全体のつまづきのきっかけとなった。時を同じくして起きた金融危機による資源高騰・賃金高を起因とする経費の上昇、金融機関の急激な引き締めが原因の関連企業の資金繰り悪化が、建設・不動産業界全体に打撃を与え、市場は急激に収縮していく。
その後も低迷状態は継続していたが、昨今では需要側の趣向も(一部は価格下落を機会ととらえて)ポジティブな方向への変化を見せ始めていた。しかし東日本大地震・震災によって生じた直接的な影響に加え、震災に伴う各種方面での消費マインドの低下という間接的な影響、さらには地震前から露呈していた政策の転換・迷走・無策さが輪をかける形で露呈され、それが消費者の住宅ニーズにさまざまな変化をもたらしている。
一方でその震災関連による影響(耐震性の強化や太陽光発電などエネルギー周りへの対策)を加味した、新しいニーズも生まれている。むしろそれらに着目し、転機ととらえている供給サイドも少なくない。

↑ 新設住宅戸数の変遷(2011年8月分まで)
グラフ掲載対象期間に限れば、2010年秋以降の下落基調の後、2011年に入ってやや回復ぶりを見せたものの、東日本大地震によって3月以降は低迷、その後少しずつ戻しを見せる雰囲気だった。ところが先月7月の上昇ぶりが急だったこともあり、今回の8月分は調整のための反落の動きを思わせる形で動いている。
「改正建築基準法」施行(2007年6月)
↓
・行政の不手際などを起因として
「新築」住宅市場が大規模収縮
低迷期続く
・2008年夏で底打ち感
「前年比」でプラスに
・2008年10月再び下落・失速へ
↓
・下落基調続く
↓
2009年3月以降低迷、その後回復へ。
↓
震災発生で不透明感。
消費者マインドの変化に応じた
新たな需要の発生も、
急な勢いで反動か。
他方、不動産全般としての動きにおいては、繰り返しになるが「耐震・免震性」「節電(蓄電設備の設置によるピークシフトの仕組みの組み込みと停電時の備え、太陽光発電ユニットや電気自動車との連動性)」など大きな注目を集めるようになったテーマに沿う住宅に、大きな注目が集まっている。消費マインド全体の低下、震災及びその周辺地域に対する不動産(土地、建物を問わず)のニーズの低下を受けた相場の低迷なども懸念されるが、今月分も後者よりも前者が競り勝った形だ。
しかし市場動向がつかみづらいのは事実。今後も新設住宅戸数の動きは注意深く眺めて行かねばならない。住宅建設マインドの増減は震災の直接被害だけに影響はされない。地盤沈下が大きかった、あるいは懸念される地域、その他自然災害のリスクが再検討されている地域の下げがちらほらと目に留まる。
また上で触れているが、【無駄を無くし、周囲との連帯を考え、情報入手先を熟考…震災後で変わる価値観】などにもあるように、人々の消費性向も含めた性格様式・考え方が、以前と比べて保守的・中庸的・地域コミュニティを重視する方向への傾きを見せている。人々の「心の動き」が住宅取得のスタイルにも変化を及ぼす可能性は小さくない。
やや余談になるが、震災絡み(大地震の再来や、その周辺震災の話、耐震性、太陽光発電や蓄電池など電気周りを合わせた、東日本大地震以降に新たに生じたさまざまな住宅関連の事柄)で、住宅購入検討者を惑わせる、あるいは詐称行為の対象にするという話も少なからず見受けられる。【第39回国民生活動向調査<結果・速報>−「震災に関連した悪質商法の勧誘や消費者トラブル」の状況−】や【「震災に関連する悪質商法110番」開設期間中に寄せられた相談の傾向】など国民生活センターの公知でも、一部ながら関連情報を確認できる。新設住宅戸数の値に連なるような行動、つまり新設住宅なりの物件購入を検討している人は、くれぐれもそのような「悪しき人達」の口車に乗せられないよう、注意してほしいものだ。
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