2011年7月の新設住宅戸数、前年同月比21.2%増
国土交通省は2011年8月31日、2011年7月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると7月の新設住宅着工戸数は前年同月比で21.2%増の8万3398戸となり、先月の増加から続いて4か月連続の増加を示したことが明らかになった。着工床面積も4か月連続・22.5%の増加を見せている(【発表リリースページ】)。具体的な内訳は持家が19.1%と3か月ぶりの「増加」、貸家は18.5%の「増加」、分譲住宅は33.2%の「増加」。今月は先月から転じて持家が増加し、貸家・分譲住宅も増加率を上乗せしている。全体として21.2%という大幅な増加を見せたのも納得がいく。
耐震偽装問題をきっかけに行われた2007年における改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際が、同年夏以降の住宅市場における混乱や、新設住宅戸数の減少、そして不動産市場全体のつまづきのきっかけとなった。時を同じくして起きた金融危機による資源高騰・賃金高を起因とする経費の上昇、金融機関の急激な引き締めが原因の関連企業の資金繰り悪化が、建設・不動産業界全体に打撃を与え、市場は急激に収縮。
その後も低迷状態は継続していたが、昨今では需要側の趣向も(一部は価格下落を機会ととらえて)ポジティブな方向への変化を見せ始めていた。しかし東日本大地震・震災によって生じた直接的な影響に加え、震災に伴う各種方面での消費マインドの低下という間接的な影響、さらには地震前から露呈していた政策の転換・迷走・無策さが輪をかける形で露呈され、それが消費者の住宅ニーズに変化をもたらしている。
一方でその震災関連による影響(耐震性の強化やエネルギー周りへの対策)を加味した、新しいニーズも生まれていることは事実。むしろそれらに着目し、転機ととらえている供給サイドも少なくない。

↑ 新設住宅戸数の変遷(2011年7月分まで)
グラフ掲載対象期間に限れば、2010年夏以降の上昇基調から一転した急激な下げ方以降、再び下落基調に移行する懸念も生じた。今年に入ると2月にややリバウンド、3月に下落と落ち着きのない動きを見せていたが、それ以降は多少ながらも上昇している。震災の生じた3月以降だけを見ると、震災以降は踊り場を経ながらの上昇の流れに見える。7月は去年の8月を彷彿させるような上昇となった。
「改正建築基準法」施行(2007年6月)
↓
・行政の不手際などを起因として
「新築」住宅市場が大規模収縮
低迷期続く
・2008年夏で底打ち感
「前年比」でプラスに
・2008年10月再び下落・失速へ
↓
・下落基調続く
↓
2009年3月以降低迷感継続中
↓
・踊り場を終え上昇開始
↓
震災発生で不透明感。
消費者マインドの変化に応じた
新たな需要の発生か?
他方、不動産全般としての動きにおいては、繰り返しになるが「耐震・免震性」「節電(蓄電設備の設置によるピークシフトの仕組みの組み込みと停電時の備え、太陽光発電ユニットや電気自動車との連動性)」など大きな注目を集めるようになったテーマに沿う住宅に注目が集まっている。消費マインド全体の低下、震災地域に対する不動産のニーズの低下を受けた相場の低迷なども懸念されるが、今月分に限れば後者よりも前者が競り勝った形だ。
しかし市場動向がつかみづらいのは事実で、今後も新設住宅戸数の動きは注意深く眺めて行かねばならない。住宅建設マインドの増減は震災の直接被害だけに影響はされない。例えば都道府県別で直近のデータをざっと見ても、「事故」で大きな影響を受けている福島県は建築物床面積、新設住宅の値が戸数・床面積ともに20%内外のマイナスを見せているものの、それと同等、あるいはそれ以上(例えば大分県)の下げ幅を見せている地域も少なからず存在する。
また、上記で多少触れているが、【無駄を無くし、周囲との連帯を考え、情報入手先を熟考…震災後で変わる価値観】などにもあるように、人々の消費性向も含めた性格様式・考え方が、以前と比べて保守的・中庸的・地域コミュニティを重視する方向への傾きを見せている。この数か月、持家が減り、貸家や分譲住宅のニーズが増加しているのも(今月分はそうでもなかったが)、金銭的な問題だけでなく、そのような「心の動き」が一因と考えることもできる。
一方で、震災絡み(大地震の再来や、その周辺震災の話、耐震性、太陽光発電や蓄電池など電気周りを合わせた、東日本大地震以降に新たに生じたさまざまな住宅関連の事柄)で、住宅購入検討者を惑わせる、あるいは詐称行為の対象にするという話も少なからず見受けられる。【「震災に関連する悪質商法110番」の受付状況−開設後3カ月のまとめ−】など国民生活センターの公知にも一部ながら関連情報を確認できる。新設住宅戸数の値に連なるような行動、つまり新設住宅なりの物件購入を検討している人は、くれぐれもそのような「悪しき人達」の口車に乗せられないよう、注意してほしいものだ。
■関連記事:
【12年間のマンション販売戸数と平均単価をグラフ化してみる】