アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年3Qまで・四半期単位版)
アメリカの新聞業界が厳しい状況に置かれているのは承知の通りで、その実情を推し量るために部数や広告売上の推移を、アメリカの新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」が公開しているデータを基に、定期的に確認している。広告費動向については最新データを基に以前【アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2010年分まで)】と【アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年2Qまで・四半期単位版)】で記事にしたものの、部数については2011年12月19日時点で未だ更新されておらず、【アメリカの新聞発行部数などをグラフ化してみる(2009年分)】と【アメリカにおける日曜版の新聞の発行部数などをグラフ化してみる(2009年分)】が最新のままとなっている(調べた限りでは、同協会とは別組織が発行している統計紙のデータを引用しているが、その引用・転送を忘れているようだ)。他方、部数の2010年分更新より先に、広告費の2011年第3四半期分のデータ公開が行われていることが分かった(同年11月22日付)。今回はこのデータをグラフ化してみることにする。データ取得元はアメリカの新聞協会「Newspaper Association of America(NAA)」のサイト内にある、【Trends & Numbers】のコーナー。ここから「Advertising Expenditures」、そして「Quarterly (All Categories)」を選べば1971年以降の四半期単位での新聞の分野別広告売上・前年同期比の推移を確認できる。
21世紀に入ってからは、2009年までは米新聞の広告収入は右肩下がりだったものの、2010年にはさすがにリバウンドの傾向が見られたのは、以前の記事でお伝えした通り。

↑ 米新聞の広告収入推移(前年比増減率、2010年分まで)(再録)

↑ 米新聞の広告収入推移(単位:100万ドル)(2010年分まで)(再録)
「リバウンド」とはいえ、前年比プラスだったのはオンライン(インターネット、以下同)だけで、紙媒体は「マイナス度合いが改善された」に過ぎず、マイナス(前年と比べて減っている)であることに違いは無い。そして2010年の動きを細かく見ると、「オンライン…復調」「紙…マイナス具合が縮小しただけでマイナスには違いなし」という動きが顕著化したのみなのが判明している。
そして今回取得した直近四半期こと2011年第3四半期のデータがこちら。せっかくなので直前期1Qも併記しておいた。あくまでもそれぞれは「前年同期比」であることに注意。直前期との比較では無い。つまり季節変動などによる影響は受けない。

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2011年2Q-3Q)
いくつか用語解説を。「ナショナル広告」とは全国区(今件ではアメリカ合衆国全土)の広告。「リテール広告」はそれに対し、小売・地域別・小口の広告。「クラシファイド広告」は小さな広告をたくさん集めて情報集合体として見せるタイプの広告。いわゆる「三行広告」というもの。この三つを合わせて紙媒体の広告となり、それと「オンライン広告」をプラスして広告全体の収入となる。唯一プラスとなっているのは「オンライン広告」だけ。これは前期から変わらない。他は全部前年同期比1割前後の減少。総合計「紙媒体+オンライン合計」がマイナス8.86%とマイナス2ケタ台に到達せずに1ケタ台に留まっているのは、オンライン広告の奮闘によるところが大きい。一方、直前期と比べると、前回の動向「一部で持ち直しの動き云々」は見事に吹き飛び、全項目で状態が悪化している。期待の星でもあるオンライン広告ですら前期と比べて値が縮小しており、新聞という媒体に対する広告媒体としての意義が疑問視されている感すら否めなくなる。
ちなみに金額ベースのグラフは次の通りで、伸び率ではオンラインが唯一プラスで奮闘しているものの、金額では全体を支えるところまでに成長していないのは(横軸項目の並び順は上のグラフと同じにして生成している)、日本の状況とさほど変わらない。

↑ 米新聞の広告収入(四半期区分)(億ドル、2011年3Q)
以前の記事で「二極化」、具体的には「オンラインは明らかに復調」「紙はこのまま低迷・縮小を続ける気配」とコメントしたが、それの一部が前期同様に2011年第3四半期の広告費にも現れている。アメリカの景気動向は現在足踏み、味方によっては再後退状態にあるが、その状況下で最適化、メディアの構造変化は確実に続いている。さらに直上で言及したように、オンライン広告の伸びにも陰りが見え、「現状の」新聞における広告プラットフォームとしての価値の「さらなる」再評価が行われ始めた可能性が出てきた。
それがより確実に把握できるのが、次の「四半期単位の前年同期比推移」を金融危機が起きる2007年からグラフ化したもの。金融危機以前から紙媒体の低迷とオンラインの堅調ぶりという動きがあり、それが不景気の波にもまれて両者とも低迷。そして上限を抑えられるような形になったものの2009年後期からは戻しを見せるが、紙媒体の戻りは限界を迎えて再び低迷に向かっている、さらにはオンラインも成長が頭打ち状態なのが(金額そのものは増加中に違いないが)把握できる。

↑ 米新聞の広告収入推移(四半期区分)(前年同期比増減率、2007年〜)
今年に入ってからオンラインですらも成長スピードが落ちているのが、イレギュラーなものではなく、傾向としての動きなのが確認できる。ネット内での囲い込み(具体的にはFacebookなどのソーシャルメディア)競争でじりじりと有望分野ですら競り負けつつあるのが想像できる。
新聞業界においては数少ない、残された希望の星といえるオンライン広告までもが成長度合の縮小を見せ始めた。これでは縮小化が加速する紙媒体部門を支えきれるはずもない。今後アメリカの新聞業界がどのような形で切り返しを図るのか、それとも状況に流されるまま、収入、そして規模そのものの縮小を続けるのか。日本の新聞業界の行く先を占う観点でも、注視を続けたいところだ。
■関連記事:
【アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2011年2Qまで・四半期単位版)】