産業の活力が分かる、大口電力使用量をグラフ化してみる(2011年11月分)
電気事業連合会は2011年12月16日、2011年11月分の電力需要実績の速報を発表した。それによると同年11月の電力需要(使用量)は10社販売電力量合計で648億kWhとなり、前年同月比でマイナス5.4%を記録した。産業用の大口電力需要量は前年同月比でマイナス2.3%を記録し、9か月連続して前年同月の実績を下回ることになった(【発表リリース、PDF】)。大口電力とは一般に500kW以上を指すもの。産業別の大口電力消費量(電力会社から見れば大口電力の販売量)は、その業種や産業の活力を表す指標として注目されている。どのような産業も電力を消費し、その量は機器の稼働率や稼働時間に伴い増減するので、「電力消費量が大きい」=「その工場が活力に満ちあふれている」と判断できるからだ。逆にいえば残業無し・工場の平日の休止などが相次げば、大口電力消費量も減少することになる(家庭でも暖冬でエアコンを使わなければ、電気代が少なくなるのと同じ理由)。ただし昨今では電力需給問題に端を発した加速度的な節電対策(商品の需給とは関係の無い稼働率の変更、冷暖房の調整、照明のLED化など)もあり、以前と比べると比例関係はやや薄らぎつつある。
2011年11月においては大口全体で前年同月比マイナス2.3%。「前年同月比」というしばりがあるが、それだけ工場の施設の稼働率が(昨年の同じ月と比べて)減ったことになる(機器の技術進歩の他に直上で説明した節電効果でのマイナスもいくぶん数字には反映されているので、今年3月分以前の数字動向と比べると、多少は誤差の範囲が大きい可能性がある)。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比(2011年10月-11月)
今月は「窯業・土石」「非鉄金属」「機械」部門で前年同月比での数字の悪化が確認できる。「繊維」「紙・パルプ」「化学」「鉄鋼」は改善し、「繊維」「鉄鋼」に至ってはプラスの値すら示している。産業の発展・縮小という観点から見れば、「繊維」「鉄鋼」の伸びは頼もしい限り。
先月比のグラフでは短期はともかく中長期の流れをつかむことは難しい。そこで記録保全の意味も含め、2007年1月以降の全産業別の前年同月比推移グラフを掲載しておく。

↑ 大口電力使用量産業別前年同月比推移(2007年1月以降)
中期的な大口電力使用量の動向としては、「2010年4月を天井に、同年3月までの急速回復傾向がやや失速に転じた後の、安定成長期に移行したように見え」た動きがほぼすべて失われ、2011年3月から大きく下落しているのが改めて確認できる(無論東日本大地震・震災を直接・間接起因とするもの)。また直近数か月は多くの項目でマイナス圏での推移が続いており、工場の物理的な損害以外に、(原材料の調達不足、タイムシフト・デイシフトをはじめとする各種節電対策など)多種多様な稼働率・生産調整が影響している様子が見て取れる。
さらに1年前のこの時期が(リーマンショックからの)回復傾向にあったことを考えると、「それ(1年前)と比較して」の値が算出されるので(つまりはプラスと比較される。今月の場合は2010年11月で、その時は全体で「その時の」前年同月比プラス7.1%)、今後もしばらくは今月のようにマイナス値を継続することが容易に想像できる。ただし繰り返しになるが、「繊維」「鉄鋼」はプラスを示しており、頼もしさがにじみ出てくる。
今件大口電力は国内景気(内需)を推し量る物差しとなる指標の一つ。被災した工場が復興するまで、物理的な電気の消費元が減ることになるのに加え、上記でも触れているが、各種部品不足に伴う工場の稼働率の低下、節電対策による消費電力減退など、数字の低迷は否めない。
今後も全体の需給の流れと共に、特に製造業の動向を間接的に確認できる、大口電力の動向は注意深く見守っていきたい。